Little Glee Monsterの歌は、コカコーラのCMソング「世界はあなたに笑いかけている」で初めて聴いた。一昨年のことだ。

女子の本格的なボーカルグループは珍しい。また女性の場合、低音部を持つ人が少ない点もあってハーモニーを多重的に構成するのが難しい為、私の知る限り、彼女達以外のグループを知らない。

 

「ECHO」はNHKの「ラグビーワールドカップ」のテーマソングであり、昨年後半にはラグビーチームの活躍と共にこの曲を耳にすることが多かった人もいると思う。

 

彼女達の持ち味は、それぞれがソロ歌手としてのオーディションを勝ち抜いて来た人間で、当然、ソロ歌手としての実力を持つ。というと、かつて5人組だった頃の東方神起を思い出す。彼らも非常に優秀なボーカルグループだった。だが、東方神起はメインボーカルがはっきり存在していたグループだったのに対し、彼女達は今のところメインボーカルを担っている人間が見当たらない。要するに、誰もが公平的にそれなりの比重を持って歌っているというグループ構成になる。

メンバーが5人いるということは、ソロパートの他にハーモニーを構成するパートが4つあるということになり、それだけでも非常に音が多重構造になる。さらに彼女達の歌声は5人それぞれに全く持ち味が違う。

ハイトーンボイス、ストレートボイス、ソフトボイス、さらにビブラートがある声など様々だ。また主流になる声はミックボイスだが、低音部ではチェストボイスが使われている。ファルセットはほとんど存在しないがヘッドボイスは存在する。

これらのテクニックを5人それぞれが駆使して歌うために、彼女達のハーモニーは非常に多重的で立体構造である。単に5人の声が混ざり合うというだけでなく、様々な色彩の変化を見せる。

 

「ECHO」は低音から高音までの広い音域を要求される楽曲だ。その曲を彼女達はエッジの効いた言葉の処理で歌い上げる。リズムは縦の動線が強く、メロディーは横に流れない。あくまでも力強く縦刻みの音楽の上をハーモニーが乗っていく。歌声は高低で尖った顔を出しては引っ込む。そのバランスが絶妙だ。

そして、彼女達の1番の魅力は、リズムのエッジの深さだと私は思う。

女声の場合、どうしても声が細くソフトな為に、鋭角にリズムや音を作っていくのが難しくなる。また音楽は横に流れやすい。その点を彼女達は見事に克服している。

各パートが鋭角にハーモニーを作っていくことで、「ECHO」のエネルギッシュで躍動的な楽曲の特性を表現することに成功している。

彼女達のハーモニーの多重声によって、楽曲が立体的構造になっているのだ。

音程の確かさ、言葉の処理の統一性、リズムの正確さなど、ボーカルグループとして必要な要素を高いレベルで兼ね備えているのLittle Glee Monsterであり、彼女達の高い音楽性があって「ECHO」という曲の特性は生きていると感じる。

 

女性アイドルグループが全盛の日本で、彼女達のように本格的に「歌」「ハーモニー」を主体としたボーカルグループの存在は貴重だ。

平均年齢20歳という若さでこれだけの技術力とハーモニーを表現できるのは、テクニック面だけでなく、なかなか目が出なかった時期やメンバーの繰り返される脱退などの苦労を積んでいるからに他ならず、あらためて、「人生経験が歌手を作る」ということを感じさせた。

 

本格的なボーカルグループとして、今後、彼女達がどのような世界を築いて行くのか非常に興味がある。