5人が作詞に参加したという「明日へ」を聴いた。

 

中音域のストレートボイスの綺麗な響きがこの曲の主要な部分で聴こえてくる。

Little Glee Monsterの場合、彼女達の歌声の流れが楽曲の音楽の流れそのものになる。

この曲においては、メロディーラインが真っ直ぐに伸びてくる。それに合わせて彼女達の歌声も上下の揺れのない真っ直ぐな一本のラインの中で音の上を流れて行く。あくまでも歌声のイメージはストレートで力強い。

これは彼女達の楽曲が一生懸命に生きていく人達への応援歌が多いことから来るのかもしれない。あくまでも力強く明るく前向きに真っ直ぐに音が伸びていく。

 

Little Glee Monsterのハーモニーが他の今までのボーカルグループと異なる点は、ソロパーとハーモニーパート、さらにデュエットパートが力関係において同列に並ぶことである。

普通、ボーカルグループの場合、メインボーカリストがいる、または、メインパートがあって、その音を補佐する形でハーモニーがつけられる。即ち、あくまでも一つのメインパートの音があり、その周囲にそれを補充する形でハーモニーの音が存在する。

しかし彼女達の場合は、メインパート、ハーモニー、デュエットパートの音楽が横並びで存在する。その為にメインパート以外のパートの音楽も主張した形で存在する。

同列の横並びの音がボリューム的に重なり、さらに音程の幅を持ちながら上下に重なり合うという構造になる。

音と音とが主張しあって決して引かない。この力関係は5人の音楽性と技術が同列であるから成立する世界で、誰かが突出、または不足しているという状況では決して成り立たない世界である。

 

ハーモニーをつけるとき、また、デュエットをするとき、あくまでもメインパートを引き立つように作っていく場合と、それぞれのパートの音楽が主張し合う中で、一つの音楽の世界を作っていく場合がある。

前者はオーソドックスで危険のない正統派の音楽が出来上がるが、後者の場合は、各パートを担う歌手の実力が作用する為、ある意味、非常に魅力的な世界とも言える。

 

彼女達の音の世界はまさに後者の世界で、5人の歌声がそれぞれに自己主張し、存在している中で、一つの音楽を作りあっていく世界であり、これが多重構造のハーモニーと言える所以だと思う。

5人の音が重なりあったり、離れたり、飛び跳ねたり、自由自在に空間を移動していく。まさに音の世界を楽しむことが出来るのだ。

 

久しぶりに本格的なボーカルグループに出会った。

もっと楽曲を聴きたいと思った。