最後に追記しました。

 

三浦大知の歌のreviewを書き始めて半年。reviewナンバーが100になった。

今までこのブログを書く以前に書いていたブログも含めて、これほど一人の歌手のreviewを書いたことはなかった。

正直、三浦大知という歌手についての知識は多くない。

reviewを書き始める前の私の中での彼の印象は、「ダンスチューンの上手い人。ストリートミュージックの担い手」という曖昧な印象しか持たず、彼がソロのR&Bの世界を確立しようとしている事、あくまでも日本語の歌にこだわり、日本語の歌を世界中に広めたいと思っていることなど、歌手として音楽に対して非常に強いこだわりを持っているということもreviewを書き進めていく中で知った。

発声を変え、長い間、メディアに出れず不遇の時代を過ごしていても、決して音楽を諦めず、常に前を向いて、少しでも進化する道を歩み続けてきたのは、彼の「音楽が好き」という強い気持ちの現れだと感じる。

 

まだ2ndアルバムの途中だが、100曲聴いてきた中で、どの曲が好き?と聞かれれば、私は躊躇なく「music」をあげる。

この曲は、軽いアップテンポの曲で、高度なテクニックも難しいパフォーマンスも必要としない、ごくごくシンプルで簡単な曲だ。

しかし、私はこの曲に三浦大知という歌手の力量をあらためて確認するのである。

 

「シンプルで簡単」という音楽は、耳に心地よく、一度聴けば口ずさめるものが多い。

「music」も一度聴けば、すぐにメロディーを口ずさめるほど、シンプルで簡単なメロディー展開だ。

三浦大知のダンスパフォーマンスやバラードが好きな人にとってみれば、取るに足らない曲であるかもしれない。

しかし、私はこの曲を歌う彼が最も魅力的で好きだ。

この曲を初めて聴いたとき、「音楽が好きで堪らない」という彼のほとばしるような情熱を感じた。

何より、彼自身が音の世界にいることが楽しくて仕方がない、音を身体の中に取り込んで心の底から楽しんでいる。

彼自身が心の底から、音楽を楽しんでいる、という気持ちが溢れ出すのを抑えきれない。

そんな感じがした。

 

シンプルで軽いポップ系の曲は、一見、簡単そうに見える。

しかし、実際に歌ってみると、彼のように単純に軽快にポップに歌うのは案外難しいことがわかるだろう。

実はシンプルな曲ほど難しい。そして、歌手の力量が顕著に示されるものはないのだ。

その曲を彼は文字通り、「音を楽しんで」歌う。

彼の「music」は、音が飛び跳ねているのだ。

 

「ONE END」で終盤にこの曲を歌うセトリが組まれていたが、本当に楽しかった。

彼の放つ音がホールの空間を飛び跳ねて、観客席や壁、天井に散らばっていく。それを観客がキャッチし、彼に返す。また彼は投げかける。そんな音のやり取りを体感した。

これが「三浦大知の音楽の世界」なのだと思った。

 

「皆さん、音楽で繋がりましょう。三浦大知の音楽の世界を楽しんで行ってください!」

 

そう彼は言った。

その言葉通り、彼のライブには「音を楽しむ」「三浦大知の音楽の世界を体感する」

そういうスタンスしか感じられなかった。

 

彼は本当に「音楽」に真摯に向き合い、「音楽」のことだけを考え、常に進化し続けている。

 

アルバム「球体」には、彼の音楽へ向き合う凝縮された気持ちが「音」と「言葉」の融合という形で、誰も追随出来ない新しい音楽の世界を提示されていた。

 

「球体」は、三浦大知の音楽の究極の世界であり、音楽に真剣に向き合い、突き詰めていった世界が現されている。それはまるで「純文学」の世界のようだった。

アルバム「球体」で、三浦大知の音楽は「哲学」になった。

 

 

派手なパフォーマンスもきらびやかな演出もなくていい。

彼の音楽の世界は、シンプルで単純、そして、彼の音楽に向き合うスタンス。

これらの基盤が根底に流れている世界である。

 

まるで職人のように真面目に音楽というものを極めていく彼の姿は、三浦大知の音楽の世界そのものである。

 

これからも多くの楽曲を聴きながら、彼の歌と音楽の変遷をたどっていきたいと思う。

 

追記

新曲「Backwards」で、彼の歌唱力は飛躍的に伸びていることをあらためて確認した。

それはレビューにも書いた通り、呼吸法の確立だ。

あれほどの激しいダンスを踊ってもブレスが乱れない、というのは、彼が完全に呼吸法を習得仕切って、それが身体の感覚の一部として定着しきっているからに他ならない。

歌手は、パフォーマンス中、常にどこかで自分のパフォーマンスを見ている。

即ち、パフォーマンスしている間、どこかに別の自分がいて、歌声、仕草、観客の反応など、どこかで冷静に見ている目を持っている。

そういうものを持ちながら、自分の歌や踊りを点検している。

自分に自信のないもの、身につけ切れていないものがあれば、それをする度に気になって他のパフォーマンスや歌に集中出来ない時がある。

しかし、彼を見る限り、そういうバラバラの感覚は全くなく、歌と踊りの一体感、完全に感覚が身についているのを感じた。

さらにカップリング曲での高音ボイスは、彼の発声が非常に安定していることと、さらに高音域が伸びていることを示している。

彼は今年、34歳。

普通なら成熟期に差し掛かる年齢でも、彼の場合は進化中だ。

高音は発声さえ間違わなければ、いくらでも伸びる音域だ。

今後の彼の歌手としての進化を楽しみにしている。

哲学と音楽の一致。

彼にしかない世界は非常に魅力的だ。

益々進化する彼がどこに向かっていくのか、ずっと見守りたい。