新曲「Backwards」のカップリング曲。

「Backwards」が三浦大知のダンサーとしての実力を見せつけた曲であるなら、この「About You」はシンガーとしての実力を見せつけた曲と言える。

非常にレベルの高い歌を披露している。

これが三浦大知の凄さと言えば余りにも簡単な形容だが、それ以外に形容の仕方がないぐらい、この曲は歌手としてさらにステージアップしている。

それは曲の冒頭の澄んだ歌声から始まる歌いだし。

この歌声に全てが凝縮されている。

 

3年前、私が彼の歌声を初めて聴いた頃、彼のファルセット、即ち、裏声は少し不安定だった。

それは明らかに表声のミックスボイスからファルセットへの切替え部分で、ボリュームダウンをすることが多かったからだ。響きが抜けて声量が落ち、チェンジボイスが顕著だった。さらにファルセットからヘッドボイスへの転換が出来ていないこともあった。それが唯一、私が彼の歌声で気になる点だった。

しかし、それから3年。

彼の歌は進化し続けてきた。

非常に安定した高音部を出せるようになった。

ファルセットからの響きにしっかりとした芯を持つようになり、非常に澄んだ綺麗な響きのストレートボイスの高音部を披露するようになった。

この音域の広がりを手に入れて、彼の歌は進化している。

今回は、今までにない最高音に挑戦しているのが素晴らしい。

 

三浦大知は優れたダンサーである。

これは紛れもない事実だ。

しかし、その一方で優れたシンガーでもあるのだ。

この二つの車輪によって、三浦大知の音楽の世界は限りなく広がっている。

 

今回のMVを拝見して、特に素晴らしいと感じるのは、全体に力が抜けているところだ。

どこにも気負いがない。

それは、踊りながら歌う、という彼特有のパフォーマンスの中で非常に脱力感を感じる。

さながらに踊り、さながらに歌う。

彼の中ではごく自然に二つのことが当たり前のように出来ている。

歌において力を抜いて歌うことが如何に難しいかということと同じように、きっとダンスでも力を抜いて踊ることは難しいだろうと思う。

力を抜いているように見えて、実は訓練し尽くされた身体でなければ、声帯も筋肉も動かない。

如何に軽く歌っているように聞かせられるかは、歌手の力量にかかっている。

 

そんな世界に三浦大知は足を踏み入れたのだと感じた。