「明日へ」は2017年9月は発売の9枚目のシングル。
コロナで活動が制限される中、メンバーとバンドメンバーがそれぞれ自宅で録音したものを合わせての演奏である。
縦に刻むリズムに対し、メンバーの歌はそれぞれのタンギングのエッジが鋭く切り込んでいく。
エッジを深くして発音することにより、バラバラでの録音のカウントの頭を意識的に合わせている。
そうすることでリズムのズレを防ぎ、ハーモニーを合わせている。
「明日へ」のホームヴァーションの歌声は、そういう印象を持った。
5つの声のタイミングを合わせていかなければならず、ソロ歌手にはない難しさを感じさせるものでもある。
しかし、そういうものの難しさも彼女達にかかれば、難なく乗り越えてくる。
いつもながらにそれぞれがそれぞれのパートの役割をきっちり果たす。
一緒に歌っていた時から、横のメンバーや一緒に歌っているメンバーを見ることなく、自分の音程とリズムを守りながら、耳で他のメンバーの歌声を判断している。
そして、決して他のメンバーに合わせるのではなく、自分1人1人の音楽を奏でてくる。その主体性が音の厚みとなってハーモニーを立体的に作り上げてくる。
リトグリの世界はそういう世界である。
決してそれぞれが相手の音楽に合わせるために自分の音楽を引っ込める、または主張しない、という消極的なハーモニーの世界ではなく、5人それぞれが自分の音楽や歌を主張してくる。
その中で、ソロパートも含めてのハーモニーの世界というものを作り上げている。
これが今までのボーカルグループと全く違うところであり、ハーモニー部分に非常に力を持っているグループであるということが言える。
この曲もソロパートの5つの音色にそれぞれのカップリングしてくるハーモニーの音が被さり、非常に質の高い立体的音響の世界を作り上げた。
それぞれが別の場所で、歌うことによって、さらに自主的な音楽を主張し合い、それを合わせることによって、各自の音の世界が主張しあってくる。
そんな幅と響きの深さを持ったハーモニーの世界を作り上げている一曲である。