この日、彼女達は、多くの楽曲を歌い、大活躍だった。

その中でもこの曲が印象に残った。

なぜなら、この曲にはピアノと5つの声という非常にシンプルな世界が拡がっていたからだ。

 

 

この日の演奏は今井了介氏のピアノと5人の歌声の6つの音だけが存在する世界だった。

今井氏の繊細で澄んだ音色の上に5人の透明感溢れる歌声の線が綺麗に乗っていく。

一人一人の歌声のラインが手にとるようにわかり、5つの音が交錯したり、離れたりを繰り返しながら音楽は前へ進んでいく。

 

力強いソロのメロディーラインに二重、三重のハーモニーの歌声が重なり、多重構造の音の世界を作り上げていく。これが彼女達の音楽の世界だ。

 

この日の演奏では、ピアノ伴奏だけの上を彼女達の音のラインが走り、ほぼ歌声が丸裸に近い状態になった。

それゆえ、音の動きが細かくわかり、一層のダイナミックさを音楽に与えていた。

 

この曲は安室奈美恵のカバーだが、スケールが非常に大きな楽曲だ。

そのスケール感を彼女達の音とピアノの音だけで見事に再現したのは、それぞれが自分の音楽軸をしっかり持って、表現したからに他ならない。

 

 

また今井氏のピアノは、彼女達の歌に寄り添うだけでなく、終始、音楽をリードし、彼女達のハーモニーを引き出しやすいリード感のある伴奏で、その音楽に促されて、彼女達のハーモニーがさらに前へ進むという世界を作り出していた。

非常にレベルの高い多重ハーモニーと音楽の世界だったと感じる。

 

 

歌が終わり、最後、ピアノの分散された音が一音一音綺麗に響いていたのが印象的だった。