2007年5月に発売された12枚目のシングル。

氷川きよしの演歌にはまだ全曲を聴いたわけではないが、3種類に分類できるように感じる。

「白雲の城」や「一剣」に代表される演歌の王道をいくもの。「大丈夫」などに見られるポップス演歌。そして、「きよしのズンドコ節」などに見られる既存曲を彼のオリジナル曲としてアレンジしたもの。

これらの3種類に大きく分類できるのではないかと考える。

この「きよしのソーラン節」は間違いなく3つ目の「既存の曲を彼風にアレンジしたオリジナル曲」に入るものだ。

 

歌声は歯切れの良いソーラン節の音楽を意識した強い音色のものになっている。

言葉やフレーズの断ち切りもエッジを深く切り込んでいく手法が使われており、縦の音楽のラインが強調された作りになっている。

元来の「ソーラン節」が持つ力強さや土着のリズム感を十分意識した歌い方になっている。

ただこの曲も前回の「一剣」同様、彼本来の歌声というよりは「男性的な強さ」の作られた声というものを感じる。

 

彼が歌声を変えたとすれば、このような男性的な強さを求める「演歌」というジャンルにおいて、彼本来のストレートな声をこぶしのある強い音色のものにつくりかえ、「演歌」というジャンルに合った歌声にした、ということなのではないかと思う。

なぜならこの曲でも一度も響きを抜いた歌声が存在しないからだ。

喉に必要以上の力を入れて押して歌っている、という感じが見受けられる。

これが長い間、続けば、いずれ声帯に機能的障害が発生する恐れが十分にあったと感じる。

音域的にも彼本来の持つ高音域ではなく、低音域が多用される「演歌」では、どうしても声帯に負荷をかけることは免れなかったのではないか。

そういう長年の蓄積が彼の声帯ポリープを作り出したように思う。

まだこの時点でその兆候は見られない。ただ、このような歌い方をしていることを危惧するのみである。

 

今回、彼の歌声を知るのにデビュー当時からのMVが公開されているのは本当に有り難かった。

普段、演歌の人の過去のものは、なかなか音源を探しても見つけづらく、彼が20年の間にどのように声が変化してきたのかという私の個人的興味を満足させて頂けるものとなったことは感謝している。

 

まだまだ彼の歌手活動の中期に入ったばかりである。

今後の変遷を聴くのが楽しみだ。