椎名林檎のカバー。

ファンが大好きな曲だということでリクエストしてくださったのでオリジナルの林檎の歌と彼の歌を聴き比べてみた。

 

先ず、林檎の歌は非常に怠惰的、緩慢な音楽の始まりである。

リズムの刻みが明確でなく横へ流れていく。彼女特有の独特な怠惰感だ。

音楽は縦刻みなのに、彼女の歌は横へ流れる。それは彼女のタンギングのエッジがレガートで言葉の繋ぎが横へ流れるためである。その特徴が中盤まで続く。

中盤以降、音楽が動いていくのに合わせて彼女の歌もエッジが効き出し、動き出す。後半のエネルギッシュな歌へと一気に流れ込んでいく。

 

これに対し三浦大知の歌は、最初から小気味良い。

音楽の持つ縦のリズムに彼の言葉が載っていく。

冒頭の横へと流れていく音楽の進行に対し、彼の言葉のエッジは確かに強くなくレガート唱法(滑らかに歌っていくこと)になっている。意識的に横へ音と言葉を繋いでいく。

中盤以降、彼の歌も刻みが良くなり、前へ前へと音楽が動き出す。

全体に林檎に比べて落ち着いた形での歌が続く。後半もエネルギッシュな歌というよりは、淡々と音楽を刻んでいく、という印象だ。

彼の歌には根底に絶えず前へと進むリズム感の良さがあり、それが林檎の歌とは別の音楽の世界を作り出している。空白の小節にも絶えず流れ続ける彼のリズム音楽を感じることが出来る。

縦刻みのリズム感に乗った歌声が全体を覆い続け、決して音楽は止まらない。縦刻みのリズム感の良さを感じさせる世界だ。

どんな歌にも流れている彼のリズム感の良さをこの曲の中にも感じとることが出来る。

林檎の歌が横流れの怠惰なリズムの世界なら、彼の歌は縦刻みのエッジの効いたリズムの世界と言えるだろう。

 

最後のフレーズは、リズムの余韻を残した彼ならではのものになっている。