井上陽水の「少年時代」はこの時期になると必ず歌われる歌の一つだ。
夏の終わりの夕暮れ時の過ぎ去った時間を感じさせるメロディーは多くの歌手がカバーしている。
城田優の「少年時代」にはそういうノスタルジーを感じさせる力がある。
非常にオーソドックスな歌い方だ。
彼はオリジナルを大事にして自分の感じたものを加味して歌いたいという主旨の発言をしているが、非常に原曲に忠実、オーソドックスで真正面から音楽を捉えた歌い方をしていると感じる。
綺麗な中音域のストレートボイスの声の波形が真っ直ぐに伸びていく。
直線でありながら、突いたような鋭さを持たないのがこの人の特徴だ。
それはストレートボイスでありながら、円やかで、包み込むような響きの歌声であることによる。
この曲もどこまで行っても、突き上げるような鋭さはない。
ただ真っ直ぐに歌声が伸びていくだけだ。
高音部になるに従い、響きの色は増していく。少しずつ色濃くなっていく歌声の響きは、そのまま夏の花火のように空間に形を描いていく。
花火が消えた後はセピア色の風景がその場に残っているだけだ。
エンディングの彼のハミングは、まるで去りゆく夏の名残りのようだった。
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