城田優のカバーアルバムに収録されている「少年時代」を聴いた。

以前、NHKの「Covers」で彼がこの曲をカバーしたのを聴いた時もそうだったが、多くの歌手がオリジナルの井上陽水の歌を踏襲するように歌うのに対し、今回収録されたカバーは、全く様相を変えた。

 

先ず、全体がジャズ風にアレンジされており、リズムもスイングしている。

それに合わせて彼の歌も気怠さを感じさせるものとなり、オリジナルの井上陽水の歌が少年期の爽快感であるのに対し、彼のカバーは、一種の倦怠感を持つ大人の歌になっている。

 

この曲に関する彼の歌声は、非常に直線的である。

わざと発声ポジションを固定することで、声がうねりも曲線も持たない。

どの音も直線的でリズムが横に揺れて進むのに対し、彼の歌声は縦刻みに進んでいく。

またロングトーンはわざと響きを固定し、音程も音色も揺れないように歌っている。

即ち、非常に直線的なのだ。

また声質は透明感が勝ったトーンになっており、その中に甘い音色が混じる。

 

城田優はミュージカル俳優だが、様々な作品に出演する中で、確実に音楽性と表現力を身につけてきている。

カバーアルバムには、その歌手の持ち味が強く反映される。

これはどんなにオリジナルの歌い方を踏襲したとしても、そこには必ず歌手固有のものが記されていくからに他ならない。

多くの歌手が、カバー曲を歌う時に、オリジナルの持つ雰囲気を踏襲するのは、その曲の持つイメージを壊さないためだが、城田優のこの曲のカバーを聴く限り、彼はオリジナルのイメージを一旦自分の中に入れた上で、自分の歌い方を曲の上に刻み込んでいく。

 

城田優の歌う「少年時代」は、楽曲の持つ清涼感を打ち破り、大人の香りのする楽曲へと変貌している。

そこが非常に面白いと思った。