「夏歌」の特集ということで城田優がサザンの「真夏の果実」を歌うのを聴いた。

彼は本当に安定していて上手い。

そう思った。

 

彼の何がそう感じさせるのか、考えてみた。

 

この曲は低音部から始まる。

この低音部での彼の歌声の特徴は透明的な色合いの歌声だ。

その歌声を今回は少し鼻腔に響かせている。それゆえ、透明な中に時折、甘い響きの混濁が見える。

メロディーが展開して行くに連れて、音域は上がり、彼の歌声も色を帯びて行く。

甘い伸びのある中音域が披露されている。

さらにサビの部分に入るとその歌声は力強くなり、それに伴って色合いも深く濃くなる。

真っ直ぐに伸びたストレートボイスの中に色合いが深さをまして行く。

綺麗な響きの甘い歌声だ。

正確に歌い継がれて行く音程は、切ないメロディーラインを浮き上がらせて、彼の甘い歌声と共にセンチメンタルな夏の日の夕暮れを感じさせて行く。

時折、抜いて歌うファルセットもチェンジボイスにそれほどの違和感はない。

若干のボリュームダウンもチェンジボイスが繰り返されるたびに解消されて、細い綺麗なストレートのヘッドボイスへと転換されて行く。

 

彼が言うように後半の畳み掛けるように展開されて行くサビの繰り返しのメロディーは、シャウト気味の響きになり、彼の気持ちの高揚感が伝わって、エネルギッシュさと共に甘い感傷を誘う。

安定の上手さだと思った。

 

彼の上手さは、彼のスケールの大きさに比例する。

彼の歌手としての懐の深さが楽曲を呑み込んでしまう。

ミュージカルの大役で鍛えられたスケールの大きさは、JPOPのどんな楽曲にも対応できるだけの力を持つ。

 

もし、彼に足りないところがあるとしたら、経験だけだ。

ソロ歌手としての経験。

ミュージカル俳優ではなく、1人の歌手としての経験。

しかし、それも時間が解決しそうな気がする。

 

コロナの影響で消えたミュージカルの舞台は、城田優にソロのステージを用意した。

カバーアルバムの計画と共に、彼にじっくりとJPOPの楽曲と向き合う時間を与えたのだ。

 

益々、彼のカバーアルバムが聴きたくなった。