2012年2月8日発売の21枚目のシングル。

彼の恩師の亡くなった奥様の口癖だった「私が死んだら櫻になるわ」の言葉から、なかにし礼が作詞したもの。

私は彼の曲の中で、この曲が最も好きな曲だ。

非常に情感溢れた曲調で、一言一言が丁寧に紡がれていくバラード。

歌謡曲の王道だ。

 

氷川きよしはこの歌を暗めの音色で歌うことで、櫻の持つ幻想的な世界を表現している。

低音部から中音部にかけての音色は非常に暗く、かといって、演歌歌手特有のうねりはない。

発声ポジションを下に取ることで、胸の部分に響きを当てるチェストボイスを作り上げている。

後半のサビの部分では、それとは対称的に明るめの綺麗なハイトーンボイスを披露している。

伸びがよく少し細めの歌声だが、透明感に溢れている。

この音色を聴く限り、音声障害というほどの障害は感じられない。ただノーズポジションに意識的に入れて歌っているという印象は持つ。これが彼の中で、楽に出せない、楽に反応しないという感触を感じているのかもしれない。

いつものカーンとした抜け感が今ひとつ感じられないのは、意識的にそうしているからなのか、それとも本人はそのように歌っているにも関わらず、声が抜けていかないのか、そこのところはわかりにくかった。

 

いずれにしても、この曲は彼の歌と共に非常に秀逸。

氷川きよしとしての新たな可能性を示した曲と言える。