NHKで3年ぶりに放送された「玉置浩二ショー」

この日、最も印象に残ったのはこの曲だった。

「yのテンション」

松井五郎氏の歌詞に彼自身が曲をつけている。

 

「都会の空気感」

「大人の洗練された感情」

この曲を聴いた時に抱いた印象はこの2つの世界観だった。

 

玉置浩二の歌の世界は完成している。

音楽の世界も言わずもがなだ。

その中でこの曲の空気感が最も玉置らしいと感じる。

「田園」や「太陽」のような土着的エネルギー溢れる世界観の反面で、「ワインレッド」や「メロディー」のような大人の乾いた都会の空気感の世界。

 

玉置浩二の持つ音楽の世界は、相反する二つの世界を確立させている。

 

この曲でも彼は歌手として完成されたテクニックを披露している。

冒頭の色のないソフトな音色。横に流れる静かな音の連なり。

やがて中盤からサビに入っていくに従って彼の歌声は色を増す。

淡色から濃色へ。

濃い色の張りのある歌声なのに、なぜか彼の歌声はソフトな響きを持つ。

幅のある響きの中に硬さのない柔らかさ。

これが彼だけが持つ歌声の色味だ。

その色は厚みがあり何層にも重なり合って一つの音を作り出す。

ストレートでもなくビブラートがあるわけでもない。

非常に混濁のない温かみのある歌声だ。

彼の包容力、器の大きさ、何もかも呑み込んでしまう深さ。

そんなものを全て身体の中に取り込み、昇華させた歌声。

玉置浩二だけが持つ声の色だ。

 

リズムは正確で横に流れるようで決して崩れない。非常に音楽に対してオーソドックスで真正面から向き合う音楽を作っていく。

この人の真摯に物事に向き合うスタンスの一端を垣間見る音楽作りだ。

 

玉置浩二の音楽の世界は完成されている。

誰の追随も許さない。

 

彼は唯一無二の存在だ。