「奏」と言えばスキマスイッチの代表曲だ。多くの歌手がカバーするこの曲を玉置浩二と歌うのを聴いた。

意外だった。

何が意外だったかって、2人の声質が同じだったからだ。

こんなに2人の声が似ているとは思わなかった。

 

「奏」は静かに始まる冒頭の曲調と違って、後半、非常にエネルギッシュにメロディーが展開していく。歌手の歌唱力を非常に求められる曲だ。

この曲の2人のコラボは見事だった。

それはハーモニーの世界が閉じたり開いたりする醍醐味を感じさせたからだ。

 

「奏」は元々ソロ曲でハーモニーをつけて歌わなくてもそれだけで世界観を感じさせる楽曲である。しかし、ハーモニーをつけることでその世界が深みを持った。

玉置浩二がハモった途端、メロディーが縦に深掘りされ、音色に厚みがついていく。

2人でメロディーを歌えば、深みは消えて太い一本の線が見えてくる。エネルギッシュで幅のある、それでいて音色は綺麗に統一された世界だ。

2人の歌声が一本の線になったり、二本の線になったりしながら、メロディーの世界を進んでいく。ハーモニーが閉じたり拡がったりする音楽の世界が見事だと思った。

そして何よりそれぞれの歌声が交錯して、しっかりとした立体的構造の世界を構築していた。

2人の幅のある太い音色が四方から支え合って、野太い「奏」の世界を作り上げていたのが印象的だった。

 

楽曲「奏」は大橋だけでなく、どんなアーティストが来ても、その世界を真正面から受け止め、びくともしない構造物であることを玉置浩二というアーティストが歌うことで証明したのだった。

 

非常に完成度の高い「奏」の世界を聴いたのだった。