2月12日リリースのアルバム「BRIGHT NEW WORLD」に収録されている1曲。
「あー、いい歌だなー」
これが第一声を聴いた時の感想だ。
アップテンポの中で、ハイトーンボイスのハーモニーが響いている。
明るい色調とアップテンポに彩られた前向きになれる一曲である。
前曲「ECHO」で力強いサウンドの世界を示した彼女達は、この曲でポップで明るくテンポ感のいいサウンドの世界を示している。
お見事!
こんなに明るく優しくポップな色調の音の世界も彼女達は軽々と表現できるのだ。
前記事で彼女達のハーモニーの世界の特殊性として、メインボーカルの流動性とハーモニーとソロパートの対等性を書いたが、この曲もまさにその世界の魅力満載だ。
明るく真っ直ぐなストレートボイスのソロパートのラインにデュエットパートの音が対等の形で被さってくる。さらにハーモニーパートがメインボーカルの音色と統一されている。
この曲も言葉とリズムのエッジが効いている。縦ラインのリズム刻みの中で、歌のラインが横に幅広いサウンドで流れていく。縦刻みのリズムに対して、ボーカルパートはあくまでも横に流れていく。
優れていると感じるのは、横に流れたサウンドを作ってもリズムが崩れないことだ。リズムはあくまでも縦刻みであるのに、歌のラインは滑らかなラインを作っていく。この対比が見事だと思った。
16年前、5人の東方神起が本格的なボーカルグループとして出現した時、長年、歌の仕事をしてきて、JPOPに全く興味のなかった私は、彼らの作り出すハーモニーの世界と個々の確かな技術力の世界に引き込まれた。
男性アイドルグループ全盛期の中で、「歌を聴かせる」というグループサウンズの原点というものを日本の聴衆に突きつけ、ある種、挑戦的な存在だった。
既存のアイドルグループと一線を画して彼らが作り出すサウンドの世界に「グループサウンズ」の持つ魅力をあらためて感じたものだった。R&Bやバラードなど、彼らが作り出す世界は、曲調によって変化する音の色彩の世界であり、彼らが確立する独自の世界に多くの音楽の可能性と魅力を感じた。
彼らは、既存のアイドルグループのサウンドに満足出来なかった音楽好きの聴衆の不満を吸い上げる形で存在感を示しただけでなく、韓国のグループでありながら、彼らが築き上げていくJPOPの世界に日本の音楽の魅力をあらためて認識させられた人も多かったのではないかと思う。
厚みのあるハーモニーの世界。彼らの声だけが聴こえるアカペラの世界。5つの音が飛び交う世界にハーモニーサウンズの魅力。
だから解散して6年。未だにその楽曲は生き残り、多くの人の記憶の中に歌声が存在する。
それぐらい彼らの存在は異質だった。
あのサウンドが聴けなくなって10年。
その間に彼らのサウンドを超えるグループ音楽の存在は皆無だった。
日本のグループ音楽は、既定路線に戻り、今や女性アイドルグループ全盛期だ。
彼女達のハーモニーを聴いた時、久しぶりにあの頃の感動を思い出した。
曲によって変わるハーモニーの色調、確かな個々の技術力に裏付けられた音の世界、JPOPの魅力。
あの頃、魅力に取り憑かれたサウンドの世界を久しぶりに体感した。
口パクのグループアイドル全盛期に於いて、彼女達の存在は、あの頃の東方神起のように挑戦的だ。
彼女達の作りだす音の世界、ハーモニーの世界は、長年、不満を感じてきた音楽好きの人間の飢餓感を一気に埋めていく。
昔、アンサンブルグループにいた頃、メンバーの歌声に自分の歌声を被せるのが楽しくて仕方なかった。自分がハモることでハーモニーの世界が出来上がる。声に声を重ねることで、音の厚みを歌っている人間自身が感じられる。音の重厚感の世界。
あの快感は、体験した人間にしかわからない。
「リトグリで良かった」と彼女達はSONGSで語っている。
ハーモニーの世界を誰よりも楽しんでいるのは、彼女達なのかもしれない。
久しぶりにアルバムを購入したくなった。