ジェジュンの3枚目シングル「BRAVA!!BRAVA!!BRAVA!!/Ray of Light」が発売された。ダンスナンバーとアニメのエンディングソングの両A面での企画だ。ダンスナンバーとロックバラードという全く異なるタイプの楽曲が並列で収録されている。

 

CDを聴いて改めて今回、特に強く感じたのは、「BRAVA!!…」の東方神起時代の匂いだ。

今までの数曲のダンスナンバーとは異なり、アップテンポで軽い歌い方は東方神起時代のR&Bの楽曲に趣きが非常に似ている。又、少しテクノっぽく加工された歌声を何層にも重ねたハーモニーがさらにデジャビュ感を与える。

楽曲が外国の作曲者のものであるという点もその印象を高めている要因かもしれない。

又この曲の歌声は高音域ではなく中・低音域が主体となっており、久しぶりに透明感のある歌声になっている。

これは東方神起時代の楽曲の音域に近い。

さらに日本語の言葉が今までのどの楽曲よりも明解で、早いテンポにも関わらず言葉が滑らない。

これも出しやすい音域のメロディーラインが余計な負荷を喉にかけていない結果だと感じる。

 

 

ジェジュンはソロでの日本活動を再開した当初から非常に高音域に拘っていた。

デビュー曲「Sign」、2枚目の「Defiance」など、両曲とも非常に強いハイトーンボイスを要求する楽曲になっている。

又、カバーを含めた2枚のアルバムも、軽く歌うというよりは、どちらかと言えばハイトーンで歌いきる、気持ちを歌い込める、という絶唱型の楽曲が多く収められている。

彼のイメージとしては、ロック系バラードを得意とするハイトーンボイスの歌手というイメージが強く出されていた。

しかしこの3枚目において、彼はR&B系の非常に軽いダンスナンバーを歌い、両極とも言える2つのジャンルの歌を提供している。これが今までの2枚の傾向と異なると感じる点だった。

 

 

歌手にとってシングル曲の発売を積み重ねることは大切なことだ。

アルバムは一つのテーマに沿って楽曲を収録することが多い。テーマに沿った中で様々なジャンルの楽曲を収録するのが常だ。それに対し、シングルは、その都度、テーマやジャンルを問われる。それは単発の楽曲の力を要求されるものでもある。

即ち、シングルは短距離走であり、アルバムは中・長距離走に似ている。

瞬発力を要求されるシングルは、たった二曲の楽曲によって評価が決まるものであり、ある意味、歌手にとっては勝負を挑むものであると言える。その為、音楽的な冒険はアルバムの中で行い、どうしても今までの音楽のイメージを踏襲する安全圏の中で複数枚重ねていくことが多いと感じる。しかし、ジェジュンの3枚目は、今までとガラッとイメージを変えてきたものとも言える。

 

それはCDジャケットにも現れているかもしれない。

過去2枚のジャケットや楽曲からは力強さや堅さを感じたが、今回のジャケットは明るく軽いイメージがそのまま楽曲の明るさを投影している。

今までの彼が得意としてきた「切なさ」や「甘さ」は影を潜め、「明るさ」「軽さ」というイメージに彩られている。

もう一つの楽曲「Ray of Light」には、夢を追いかけて人生を前向きに生きていく人への応援歌、前向きの明るさが歌詞に込められており、今までの彼が得意としてきた「愛の世界」とは異なり、一緒に歩いて行こうとする肯定感に溢れたものになっている。

 

以前、私は「歌手が長く歌い続けるにはファンの新陳代謝が必要不可欠だ」と書いたが、流動的なライトなファン層を獲得する為にはイメージが固定化しないことは重要だと思う。

どうしても結果を出す必要のあるシングルでは、コアなファンが好む得意なジャンルの楽曲や好きなジャンルの楽曲に偏りがちになる。しかし、流動的でライトなファン層に働きかけるには、それまでのイメージの払拭や楽曲の多様性が求められる。

そのことに果敢に挑戦していかなければファン層を広げることは難しい。様々なジャンルに挑戦する姿勢や、ある時には不評を覚悟しても新たなジャンルやイメージに転換することが歌手としての多様性に繋がる。

 

そういう意味で今回のシングルには彼の新たなイメージを獲得する可能性が広がる。

彼が新しい分野の楽曲に果敢に挑戦することを躊躇なく行えるのも、僅か5年間とは言え、東方神起時代の100以上ある多種多様なジャンルの楽曲を歌ってきた経験がソロ歌手としての自信を下支えしている。

 

「日本には自分にとって宝のような記憶が詰まっている」という彼の記憶の中には、グループ歌手としての成功体験が鮮烈に残っているからこそ、ソロ歌手として前へ進み続けることが出来るのだと感じる。

 

彼が今後、一枚、一枚とCDを積み重ねていく中で、それがどのように開花していくのか非常に興味深い。

 

彼の持つ音楽の多様性はまだ顔を出したばかりだ。

次はどんな顔を見せるのか、非常に楽しみにしている。