3月3日夜に放送された「関ジャムゴールデン2時間SP〜プロが選んだ最強の名曲ベスト30〜」を拝見した。

2020年以降のJPOPの歴史を駆け足で観るような感じだったが、その時代、その時代に共に生きてきた楽曲が多く、JPOPがやはり人々の文化に密着したものであることを強く感じさせた。

 

あらためて、この30曲のラインナップを見てみると、アーティストも音楽も実に多種多様であることがわかる。

その時代のパイオニアである楽曲、そのシーンを開拓した先駆者達の楽曲は残っても、二番煎じ、三番煎じのような曲は決して評価されないということがよくわかる。

また、ロック、バラード、ポップス、という既定路線に加えて、この20年の間に、R&B、テクノポップ、最近ではボーカロイドなどの新しい技術を伴った音楽が台頭してきているのがわかる。

その中で、SMAPの曲が2曲入っていることは、やはり、日本の男子アイドルグループのパイオニアは、SMAPであって、解散してなお、楽曲は彼らのサウンドと共に、人々の心の中に残っているということ、また、多くの女子アイドルグループが誕生してきたが、そのパイオニアは、AKB48であって、その地位は揺るがないものであるということがわかる。

また、20年前にリリースされた、BUMP OF CHICKENの「天体観測」は、今、聴いても全く古さを感じさせず、なお新しい音楽として十分通用し、彼らの音楽に2000年以降のバンドや作り手のほぼ全員が大なり小なり何らかの形で影響を受けているということを考えれば、如何に彼らが、現在のJPOP音楽を牽引してきたパイオニア的存在であるかがよくわかる。

さらに普遍的に歌の旨さの評価を受けているMISIA、サザン、森山直太郎、平原綾香、平井堅、宇多田ヒカル、夏川りみ、B’zなどの名前を見れば、如何に楽曲がその歌い手の力量によって、一層の力を発揮するかということよくわかる。これらは、SMAP、AKB、Perfumeといったグループの存在無くしては、その楽曲が成り立たないのと同じで、歌い手のパフォーマンス力がその楽曲の良さを引き出すのに不可欠な存在であることを示している。

その時代、その時代のメガヒットともいうべき楽曲を見ながら、CDが売れなくなった時代に、YouTubeという動画再生サイトから、話題になった楽曲やグループが現代の音楽シーンに大きな影響を与えているのを感じさせる。

昨年話題になったYOASOBIや、King Gnu、さらに堂々の一位に輝いたOfficial髭男dismの存在は、今後の音楽業界もCD売り上げという実態のある「地の時代」の遺産から、動画再生回数という実態のない「風の時代」の情報価値観へと人々の感覚が変わっていくのを感じさせる。

 

Official髭男dismの音楽は確かに非常にいい。

彼らの音楽には、新しいリズム感覚と共に、聴衆が覚えやすい簡単な音楽が挟み込まれており、新しいのに違和感を感じさせない共感がある。

小説を音楽にするというYOASOBIのコンセプトも、「白日」「三文小説」という哲学的要素を音楽に組み込んできたKing Gnuの音楽もJPOP音楽の新しい流れを作った先駆者であることは間違いなく、彼らから多くの影響を受けるミュージシャンが出てくると予想される。

しかし、その中で、最も奇抜でなく、正統派の中で新しい音楽の流れを作ったOfficial髭男dismが第一位に輝いたことは、音楽がどんなに新しくても、実は非常に明快で簡単な音楽であるということが、どんな時代でも普遍的に多くの人々の心を掴む要素なのであるということを示している。

 

そして一番感じたことは、文化の面に於いて後進国であると評価される日本が、大衆文化に於いて、非常に自由であり、多種多様な音楽や文化を受け入れることが出来る懐の深さを持っているということである。

これほど多種多様な音楽が、それぞれの存在感を持って人々に受け入れられているところに、日本のある部分における文化的寛容さが浮き彫りになっていると感じた。

この寛容さが、日本の歌手が長くファン文化に支えられて活動を続けられる良さなのだと思うのである。

JPOPのさらなる発展と飛躍を願うと同時に、ペンの力でその良さを世界に広めていくことが、評論家としての仕事であるとあらためて思った。

 

ベスト30位のラインナップ

1位:Official髭男dism「Pretender」

2位:SMAP「世界に一つだけの花(シングル・ヴァージョン)」

3位:MISIA「Everything」

4位:BUMP OF CHICKEN「天体観測」

5位:King Gnu「白日」

6位:サザンオールスターズ「TSUNAMI」

7位:Foorin「パプリカ」

8位:YOASOBI「夜に駆ける」

9位:森山直太郎「さくら(独唱)」

10位:平原綾香「Jupiter」

11位:AKB48「恋するフォーチュンクッキー」

12位:椎名林檎「ギブス」

13位:中島 美嘉「雪の華」

14位:Perfume「ポリリズム」

15位:平井 堅「瞳をとじて」

16位:キリンジ「エイリアンズ」

17位:米津玄師「Lemon」

18位:レミオロメン「粉雪」

19位:あいみょん「マリーゴールド」

20位:宇多田ヒカル「traveling」

21位:SMAP「らいおんハート」

22位:ゲスの極み乙女。「私以外私じゃないの」

23位:星野 源「恋」

24位:サカナクション「新宝島」

25位:元ちとせ「ワダツミの木」

26位:Superfly「愛をこめて花束を」

27位:夏川りみ「涙そうそう」

28位:Mr.Children「HERO」

29位:ピコ太郎「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」

30位:B’z「ultra soul」