ジェジュンが小田和正の「たしかなこと」でFNS歌謡祭で歌うのを聴いた。
彼の持ち味がよく出ているいい歌だった。
この曲は春に発売された「Love CoversII」に収録されている楽曲である。
本来なら、このアルバムの収録曲を中心としたツアーが今年展開されるはずだったが、コロナの影響で全て中止に追い込まれた。
さらに彼は韓国にいることを余儀なくされ、日本に帰ってこれない状況が続いている。
僅かのビザの残存時間を使って9月から10月にかけて数週間、日本に戻ってきたが、その間に配信された「BOKUNOUTA」での歌唱は、2週間の隔離期間と過密スケジュールの中での練習不足は否めず、決して彼本来の歌声とは言えないものだった。
しかし、今回の歌声は非常に充実したいい歌声であったと感じる。
今週末に全世界向けのオンライン配信ライブを控え、しっかりと歌い込んで来ている歌声だと感じた。
この曲は全体に中音域の高めから高音域の部分でメロディーが展開される。
これは小田和正の音域がその部分の為でもある。
この音域をジェジュンは、非常によくコントロールされた響きで歌った。
全体の響きは、鼻腔のフロントボイスのポジションにきちんと当たっている。
さらに彼の状態のいい時の特徴である、どの音のポジションもきちんと色彩を持っていて響きが抜けないという音色になっていた。
即ち、ある一定のポジションから響きが抜けないのである。
全体の響きは統一され、綺麗な芯のある色彩を放っていた。
また声の伸びも戻ってきている。
「忘れないで どんな時も
きっとそばにいるから」
このサビでのフレーズは、最高音から始まる作りになっているが、この最高音の出し方が、
非常にスムーズであり、一時期見られた、下から突き上げる歌い方は、すっかり影を潜めている。
先日、中国語の「守ってあげる」を聴いたが、高音の伸びが完全に戻ったと感じた。
非常に声帯の状態がいい、と感じた。
また、以前、よく見られた中音域が膜が一枚張ったようになり、響きが前に飛んでこない、という現象も昨日の曲を聴く限り、見られなかった。
どの音域の歌声もきちんと響きが前に飛んで来ており、響きの統一感から言葉のタンギングも非常に明確であったと感じる。
東方神起時代の歌声に比べて、ハスキーさや無色さが消え、全体に非常に美声、という印象を持たせる現在の歌声の方が、この人の歌声として特徴的であり、今後の活動の幅を考えたときには、有利に働くと感じた。
歌手は、ファン以外の人間が聴いたとき、
特徴的な歌声の方が有利である。
東方神起時代の彼の歌声はたしかに透明的で特徴的だった。
しかし、それは5人の歌声の中での特徴性であって、ソロで全曲を何十曲も歌う歌手というポジションになったとき、
果たして有利だったかどうかは非常に疑問を持つところである。
なぜなら、グループ歌手とソロ歌手とでは、歌声の見せ方が本質的に異なるからだ。
グループでメインボーカルを担っている歌手が、必ずしもソロ歌手として成立するかどうかは、約束されたことではない。
表現力、歌唱力の他に、声そのものがどれだけ特徴的で魅力的であるかどうかは、非常に重要な要素なのである。
そういう点で、ジェジュンの歌声は、ソロ歌手としては現在の歌声の方が成立しているのではないかと感じる。
久しぶりにいいコンディションでの歌声を聴いて、
彼が韓国でも歌手としての自覚のもとに生活をコントロールしているのを感じた。