小田和正は不思議な歌手だ。

今年72歳になる彼の歌声はちっとも年を取らない。

歌声だけ聴けば20代と言われても十分通用するほどの若さを持つ。

こんな歌手は他にはいないだろう。

 

彼の歌声は若い頃から非常に透明感溢れる歌声だった。

中・低音域から高音域にかけてヴォイスチェンジはない。全体に透明感と甘い音色で統一されている。

 

 

この歌では明るい音色が用いられている。

また軽快なタッチで歌われている。伸びやかさはどの音域も変わらない。

言葉のアタックが正確なために歌詞の言葉一つ一つが明確に立っている。

鼻腔にきちんと当てられた響きは耳に心地よい。

繊細な響きはそのまま声帯の繊細さにも通じる。

 

声帯は身体の器官の中でも他の器官に比べると老化が遅い。

徹底した自己節制をすることでいつまでも若い声帯を保ち続けることができる。

だから歌手は自己節制をして若い頃と変わらない歌声を維持しようと努力する。

歌手生命を伸ばす為に如何に老化を食い止めるか。

歌手は日々その闘いになる。

それは聴衆の耳に歌声のイメージがこびりついているからだ。

聴衆はその曲を聴いた時の歌声のイメージをいつまでも覚えていて何十年経ってもその歌声を求めようとする。

 

歌手はそのイメージとの闘いになると言えるだろう。

 

 

 

声帯は声紋にも現されるように同じ声の持ち主は存在しない。

唯一無二のものだ。

その唯一無二の歌声を維持するために歌手は日々努力する。

いつまでも若さを保ち続けれるかどうかは持って生まれたものが大きく影響する器官でもある。

 

繊細で上質な響きの歌声を持つ人は概していつまでも若さを保ち続ける人が多い。

強い声帯を持つ人ほど、その強さを過信して摂生を怠りがちになる。

繊細で弱い声帯の持ち主の方が歌手寿命が長いのは、声帯を傷めない努力を日々しているからだろう。

 

しかし、どちらのタイプの声帯を持つかは持って生まれたものに依る部分が大きい。

 

小田和正はそういう点で選ばれた存在だと言える。

彼の歌声はこれから先も変わることはない。

 

きっと死ぬ直前まで、彼の歌声は若さを保っていることだろう。