ジェジュンとISSAの歌声の持ち味は正反対だ。
ISSAはカーンとした金属的な音色の持ち主であり、ジェジュンは木管的な音色の持ち主である。
この二人の声の対比は、冒頭部分のフレーズの表現によく現されている。
カーンとした乾いた音色のISSAの歌い出しは尾崎豊の世界観のそれとは異なり彼独自の世界観を曲に与える。
これに対しジェジュンの湿ったソフトな音色は、一気にその世界を尾崎の切ない世界観へと引き戻す。
それぞれが自分の音楽の世界を表現して相手の音楽感に引きずられることなく歌いきって行くところが非常に面白かった。
二つの音楽がそれぞれの良さを主張しあって行く。

ハーモニー部分ではそれぞれが旋律パートとハモリのパートを担ったが、これも対照的な音色になった。

ISSAがメロディーを歌いジェジュンがハーモニーをつけた1番では、ジェジュンの低音部のハモリがISSAの歌声を下支えし、幅のあるソフトなハーモニーを作り出した。
ジェジュンの低音部のハモリを聴きながら、久しぶりに彼がコーラスグループの出身だった事を思い出した。それぐらい最近の彼の歌声は過去の音色を払拭している。
先日の「人生で一番最悪な歌」と言った状態からは完全に精神的に復活した歌声だった。
これに対し、2番のジェジュンがメロディーを歌いISSAが高音部のハーモニーをつけた部分では、ソフトなジェジュンの歌声に対しISSAの張りのある高音部がハーモニーに芯を与える結果となっている。

このように全く音色も持ち味も曲の解釈も異なる二人の音楽性の融合は、それぞれが自分の音楽と歌い方を確立できているからこそ実現できる世界でもある。
FNS歌謡祭だからこそできる企画なのだと感じた。

それぞれの歌手が臆する事なく自分の持ち味を発揮するこの番組は、個々の歌手の実力を丸裸に曝け出させる役割も担っていて非常に面白い。

今回の歌謡祭は非常に質が高かった。