後半のハーモニー部分の解説を変更しました。
ジェジュンと城田優。
2人のコラボを聴くのは二度目になる。一度目は一昨年のクリスマスソングだった。それから2年。それぞれの変わった部分と変わらない部分が見え隠れする今回のコラボだった。
歌い出しは城田優。
息をするように歌いはじめる。
そこには何の構えもない。
普通に呼吸をしている。その呼吸の先に歌声がある。そんな感じの始まりだ。
これこそがフロントボイスのお手本のような歌声だと私はいつも思う。
ブリージング。即ち呼吸法。
この呼吸法こそがフロントボイスの全てで、「歌は呼吸に始まり呼吸に終わる」と言われる所以でもある。
ブリージングを徹底的に鍛えなければフロントボイスでは歌えない。なぜならフロントボイスは、空気の流れに歌声を載せて歌うからだ。
息の流れに乗せて声を飛ばす。
これが出来なければ、フロントボイスにならない。
その為にブリージングを徹底的に習得する。これがブロードウェイ唱法であり、多くのミュージカルのボイトレが取り入れている方法になる。
城田優がこの2年間に進化したのは、まさにフロントボイスの安定感だ。
「PIPPIN」や「ファントム」の主役を経験する中で彼が身につけたのはフロントボイスの安定感であり、それを基盤にした表現力だ。
その痕跡が今日の歌にもハッキリと現れていた。
歌い出しの息をするようなポジションからの歌声はソフトで無色感だ。それに対し、サビの部分では張りのある鳴りのいい歌声に変わっていく。ブレス量の転換だけで発声ポジションは変わらない。中・低音域の上顎から鼻腔への共鳴、そして高音域では鼻腔からさらに眉間へと響きが抜けている。
カーンと鳴りのいい歌声は無色から濃い色彩の甘い歌声に変わる。この変遷がスムーズに行われるのは、安定したエアー(ブレス)の流れが常にあるからに他ならない。
それに対し、ジェジュンの歌声は今日もフェイスポジションへ入れようとする意思が見受けられた。
長く韓国語で歌う環境の中でフロントボイスのポジションから地声のポジションへと彼の歌声のポジションは喉に落ちていた。即ち共鳴が鼻腔に入らず、喉で共鳴したまま高音部を歌う為に突き上げるような、力で押した歌声になってしまっていたと思われる。
これは韓国語の持つ特性(二重母音や曖昧母音など)が歌う時に影響を与えていたと考えられる。それゆえ、彼の歌声は東方神起としてデビューした韓国時代一年目の歌声に類似していた。ただ、あの頃と異なるのは音域であり、高音部があの頃に比べて伸びている為に、中・低音域のポジションで高音域も歌うという状態になっていたと思われる。
しかし、その発声では日本語で歌うのは喉に非常な負担を掛けることになる。その為、日本活動再開後からの彼の歌声はだんだんと高音部が出にくくなっていき、中・低音部は響きが抜け、喉に声が落ちてボリューム不足の伸びの欠いた歌声になりつつあった。
これは日本語を歌うという難しさが影響を大きく及ぼしている。
なぜなら日本語は上顎を使わない言語だからだ。下顎と口腔内の形を変えるだけで発音できる。しかし、その形のままで歌うと声帯に非常に負担をかけることになり、発声ポジションが喉に落ちてくる、という状態になる。
日本語こそ、実は意識してフロントボイスで歌わなければならない言語なのだ。そうすることで声帯を障害から守ることが出来る。
ジェジュンはファンミ以降の音楽番組で、発声ポジションをフロントボイスのポジションへと修正してきている。
そのきっかけになったのは、今回の「BRAVA!!BRAVA!!BRAVA!!」の新曲にあったと思う。
日本での活動再開以降、こだわり続けてきた高音にこの曲だけが初めて中・低音域の歌になっている。この曲を歌うことで彼は以前のナチュラルで出しやすいフロントボイスのポジションの感覚を取り戻したのではないかと推察できる。
一旦、気づけば修正は早い。
今回の歌も出だしからサビまで、非常に慎重に意識的にブレスを上顎から鼻腔へと流し入れている。その為に全ての歌声が綺麗に鼻腔に響いて喉声になっていない。そうやってサビまでのフレーズを歌えば、そのままのブレスの流れに乗せて高音を歌うのは容易なことだ。
サビのクライマックスの部分は非常にエネルギッシュでブレスの力で声を放り上げている。久しぶりに彼の高音が彼の身体から離れた瞬間だった。だから聴いていても不安感を覚えない。
ハーモニー部分。
前半のハーモニーは城田優が低音部をつけ、メロディーをジェジュンが歌う。
ジェジュンの中音域の甘い歌声に城田優の低音部の無色な声が非常によくマッチしていて、綺麗なハーモニーの一体感を作り
出している。それに対し、後半のハーモニーでは、城田優のメロディーラインにジェジュンが高音を被せてハーモニーを作っている。
城田優の張りのある歌声にジェジュンの細い高音部がそっと寄り添うような形でハーモニーがつけられている。
この部分が、非常に二人の音楽の世界の関係性を示している。即ち、二人の音楽はそれぞれがメロディーを取った時、ハーモニーを受ける側がそっと寄り添う形で、メロディーを引き立てている。
それぞれにミュージカルとグループ音楽というハーモニー音楽の世界の経験が生かされ、単なるソロ歌手でない力量を感じさせる部分になっている。
これがソロのみを経験してきた歌手とそうでない歌手との大きな違いと言える。
ハーモニーの世界は経験したものでないとわからない。特にコーラスではなく少人数のアンサンブルの経験は、相手の声を聴きながら自分の歌声を被せてハーモニーを作っていく。このハーモニーをつける側の楽しさは、経験したものにしかわからない。自分の声が被さって初めて音に幅や拡がりが生まれる。これがアンサンブルの醍醐味であり、これが出来るかどうかで、その人の音楽性は大きく変わると言える。
二人のフロントボイスのハーモニーは、二つの音質と声のポジションが同じで響きが統一され違和感がない。
響きのポジションが統一され、音楽の響きが非常に綺麗な世界だ。
声のポジションが同じ歌手同士のハーモニーはなかなか聴く機会がないだけに耳に心地よかった。
普段の仲の良さだけでなく、音楽の方向性が同じということが二人にとって信頼できる関係を作り上げていると感じた。