THE FIRST TAKEという動画サイトがある。
ここで歌手はファーストテイクで歌う。
ファーストテイクというのは、1発撮りのことである。
即ち、録音し直しなしの世界。
歌い始めたら最後まで中断することなく歌うことである。
通常、シングルでもアルバムでも録音は一発撮りではなく、何度も撮り直したりしてつぎはぎになっているものも多い。一番ベストな歌声に仕上げるために、そういう手法を用いられているものも多いのが現実だ。
だから実際に音楽番組で歌ったりすると、歌唱力にCDとの違いが出たりするのはこのためである。
しかし、本来、歌というものは一発勝負。
一旦歌い始めたら、やり直しの効かない世界である。
その世界を表現したのがTHE FIRST TAKEというサイトで、ここに登場する歌手は皆、一発勝負で歌う。
スリーピースロックバンド(3人で構成されるロックバンドのこと)凛として時雨のボーカルTKの「unravel」のファーストテイクを聞いた。
この人の特徴として、非常に細い歌声の持ち主であることが挙げられる。
全体のトーンはウィスパーボイスであり、細くブレスを多用した歌声で、無色に近い透明感がある。
ハイトーンボイスの歌声は全体に細い一本の線のように空間に歌声が置いていかれる。
中音域はやや息漏れがする。
張りのある高音ボイスは、尖った音色で、突き刺さっていく。
叫び声のような高音ボイスの合間にブレスを多用した無色の歌声が挟み込まれていく。
全体の印象が、点描画のようだと思った。
MVではいきなり彼の裸の歌声から始まる。
もっと強弱と濃淡がハッキリと対比された世界が描かれている。
全体の歌声がブレスを大量に混ぜたウィスパーボイスで歌われているのは変わらない。
アップテンポ感が強調され、全体にエネルギッシュに展開されていく。
エネルギッシュな音量の中で、細いボーカルの歌声が一層強調された作りになっている。
こちらは油彩画の印象。
同じ曲でも歌声が丸裸になるファーストテイクは面白い世界だと思った。
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