動画をあちこち検索していたら、この曲の動画が目に止まった。

アルバムに収録されている曲で、私が観た動画は2018年の「きよしこの夜」での歌唱のようだった。

 

2018年年末と言えば、「限界突破」を歌ったのちの時期で、彼の中で、演歌とポップスの歌い方の区別がハッキリと明確に出来上がっていく時期だったように思う。

 

非常に伸びやかな高音が素晴らしい。

高音のロングトーンが綺麗に伸びて空中に音の弧を描いていく。

「愛の翼」というタイトルに相応しく、歌声の翼が十分に広げられ、なんの障害もない。

歌声の行手を阻むものがない、というぐらい、気持ちよく彼が歌い切っているのがわかる。

大空に翼を広げ、自由に伸びやかに飛び回る、そんなイメージが浮かぶ。

 

この土壌になる歌声があったからこそ、その後の方向性の転換も自信を持って行えたのだと思った。

 

歌手は歌声が命だ。

歌声が出なくなれば、歌手生命は終わる。

その兆候は、歌手自身が一番わかる。

ハイトーンボイスの歌手のピークは30代で、一般的に声帯の老化が始まるのも30代だ。

即ち、歌手にとって30代はターニングポイントになる。

この時期にどのような発声をし、どのように自己節制したかの答えが、40代以降も歌い続けれるかどうかの分かれ道になる。

単に歌い続けれるだけではなく、どれぐらい歌声をキープ出来るのか。

歌手という職業は「加齢」との戦いだからだ。

これだけ伸びやかに歌えるのは、歌声に何の不安もなく歌いきれるからで、その自信が現在まで脈々と流れ続けている。

 

40代になっても伸びやかな歌声を持ち続けれる歌手はそう多くない。

特にハイトーンボイスの歌手にとっては、高音部がどれぐらい維持できるのかが歌手寿命のバロメーターになる。

そういう意味で、氷川きよしは声帯の手術が功を奏したと言えるだろう。

 

郷ひろみも結節の手術をしてから、トレーニングを積み(彼の場合は結節を深く切り取り過ぎた、というアクシデントがあったが)若い歌声とハイトーンボイスを60代になっても保ち続けている。ストイックで自己節制が厳しいのは有名な話だ。それだけの自己管理が出来る強い意志力があったからこそ、60代になっても歌い踊ることが出来ると言えるだろう。

 

身体を鍛えることは歌声を保ち続ける上で必要不可欠であり、身体が資本の歌手だからこそ、若さを保ち続ける為にも意識的に自己節制することは必要と感じる。

 

40代以降も伸びやかな歌声を保ち続けるには、かなりの自己節制と鍛錬をした人だけが残っていける世界とも言える。

 

彼の歌声を聴きながら、そんなことを思った。