城田優のカバーした尾崎豊の「I Love You」の音源を提供して頂いた。

NHKの「The Covers」に2018年10月に出演したときのものだ。

この時の歌声と去年12月にNHK「おやすみ日本」に出演して同曲を歌った時の音源と聴き比べてみた。

1年の間に彼の歌がどのように変化しているのかが興味深かったからだ。

 

先ず、2018年の「I Love You」では、全体に歌声の色彩が濃く、また甘い歌声である。

鼻腔に響いた歌声が顔の前面から息の流れに乗せられて歌っている。

歌い出しの冒頭部分からサビまでのメロディー部分は、この人の特徴である自然でどこにも力の入っていない歌い方が披露される。

その自然的な発声から、サビに入っていく転換部では、ブレスのギアが1つ上がり、豊富なブレスによって力強い歌声に変換されて幅のある、さらに甘い歌声になる。

 

このギアチェンジが非常にスムーズで、違和感がない。

 

これらの歌い方は、1年後の歌唱でも基本的に変わらない。

ただ「おやすみ日本」では、2時台の深夜での歌唱であり、どんなに調整したとしてもどうしても声帯の反応が緩慢になる傾向は否めない。全体的に2018年の歌声よりもハスキーな色彩であり、音階の動きも緩慢だ。また、この番組では、深夜の眠りを誘う歌い方を意識してか音楽が横に曖昧に流れていく歌い方になっていて、さらに力の抜けた自然体の歌唱になっている。

 

一番違いを感じるのは、サビの部分の高音部のファルセットである。

このファルセットの部分は、2018年では明らかに表声の色彩との違いを感じさせたが、2019年の歌唱では、ほとんど音色の変化を感じさせない。これはファルセットの発声における安定感が増したということだと想像する。

 

近年、この人の歌声には、中・低音域にも響きの混濁があり、初期の頃のストレートボイスから明らかに音色の変化をみてとれる。

その変化が、ファルセットの安定感が増したことで、さらにどの音域に於いても響きに混濁が存在することで、非常に甘い歌声になっている。

この部分が1年の間の彼のテクニック面での明らかな進化であると感じられる。

 

それにしても、やっぱり彼の発声はフロントボイスのお手本のようで、どの部分を切り取って聴いても、綺麗に顔の前面に響いている。さらにエアー(ブレス)の流れに乗せて、前へ前へと歌声を運んでいく手法も完璧だと感じる。

この歌い方をしている限り、彼は喉の故障と無縁だろうと感じる。

 

 

ミュージカルは、歌手城田優を飛躍的に進化させた。

またミュージカルに出演するたびにボイトレを受けて、基本を確認できる機会があることは、彼にとって非常にいい環境と言える。

彼はもっともっと上手くなるだろう。

今後、彼がどのように進化していくのか、ファンの一人として楽しみにしている。