2011年に発売された城田優、初のシングル曲だ。

この時の彼の歌声と今の歌声を聴き比べてみると、一見似通っているように感じるが、大きく違う点は、ファルセットの声の部分だ。

この頃の彼の歌声の高音部には、明らかにファルセットが使われていて、それは、か細い響きをしている。

ファルセットは、元来、裏声で響きを抜いて歌うものだが、抜かずに裏声をしっかりとした響きの歌声にしているものを頭声と言う。

この頭声発声は、ハイトーンヴォイスの歌手に多い発声で、一旦、身につけると、非常に声がラクに出せるという特性を持つ。

クラシック歌手やミュージカル歌手には多い発声法だが、このときの城田優の高音部は、まだしっかりとした頭声になりきれていない。だからと言ってまるでファルセットのようにも抜ききっていない高音部が存在する。地声と裏声とのヴォイスチェンジが顕著だ。

また、この頃から、彼の特徴である甘い中・低音域が健在だ。鼻腔に入れた甘い歌声だ。しかし、この甘い声もまだ、何もカスタマイズされていないナチュラルな歌声のように聴こえる。

一番、今と違うと感じたのは、歌のフレーズの処理の仕方だった。

現在の城田優の歌の印象は、非常に丁寧に歌と向き合っているというスタンスを感じる。

歌のフレーズを丁寧に歌い、最後の音まで神経を行き届かせている、という印象だ。

しかし、「U」の歌には、それよりも若々しい感性でフレーズの終わりを処理している。

甘い響きの歌声の中・低音部は、とくにその印象が強く、自分の感性の通りに歌っているように思える。

この頃の彼は、感性で歌を捉える部分が今よりも大きかったのかもしれない。

瑞々しい甘い歌声だ。

彼のソロ曲シングルは、この年に発売された「U」他の2曲だ。あとはアルバムの収録曲になる。

彼の歌がどのように変わっていったのか、歌番組などの映像を捜して検証してみたいと思う。