福山雅治の楽曲だ。

城田の歌は非常にオーソドックスで楽譜に忠実に丁寧に歌っている、という印象を持つ。

それはオリジナルの福山の歌がどちらかといえポツポツと途切れがちな横に流れた音楽に対し、城田の歌は縦のリズムの流れを意識した中で、レガートになだらかな横に流れた音楽を作り上げているからだ。

 

歌声は非常に安定している。

彼の持ち味である低音域から中音域の歌声は、響きを抑えた透明感のある歌い口で、優しく丁寧に語りかけ、サビの部分では張りのある音色を使って歌い分けている。

その色彩感の対比と、音楽を前へ滑らさず、その場所で留まって歌い上げていくというドラマティックな歌い方で、この楽曲をスケールの大きなものに作り上げている。

 

 

彼の歌の中で、優れていると思ったのはこの部分。

 

いつかお父さんみたいに大きな背中で
いつかお母さんみたいに静かな優しさで

 

この2つのフレーズの音色と歌い方が統一されている。

さらに、フレーズの前半の音節、

 

いつかお父さんみたいに大きな

いつかお母さんみたいに静かな

 

この部分までを音楽を前へ回転させ、その後の音節

 

背中で
優しさで

 

この音節のそれぞれの単語の「〜なかで」「〜しさで」の音節で音楽の流れにブレーキをかけ、言葉が前へ滑って行かないようにしている。

 

ここが素晴らしいと思った。

多くの歌手は前半部分の音楽の流れのままに後半の音節、言葉の語尾の音節を刻むために、前へ言葉が滑っていきがちになるが、彼はそこをしっかりブレーキをかけて歌うことで言葉が滑っていくのを防いでいる。

これは彼ならではの歌い方だと感じる。

 

 

彼が歌うカバー曲はどれも非常にオーソドックスで、基本に忠実な音楽の作りをしてくる。

即ち、楽譜に忠実であり、楽譜に書かれているものを忠実に再現しようとする歌である。

 

これはミュージカルの経験の中で培われた読譜力であり、これが彼の場合、非常に優れていると感じる。

だからどんなカバー曲を歌っても、基本に忠実でオーソドックスな音楽の作りをしてくるのだと思った。

 

癖のない音楽。

 

これが城田優の持ち味だ。