東方神起の「Truth」

2018年に韓国版が発売され、2019年発売のアルバム「XV」に日本語版が収録されている。

楽曲は非常に軽やかで都会の洗練された乾いた空気感。

チャンミンの細く尖った高音部からの始まり。綺麗に鼻腔に入った細いストレートボイスだ。そこにユノの鼻にかかった甘めの低音の歌声が被さるようにしてハーモニーを作っていく。

 

韓国語バージョンと日本語バージョンを聞き比べた。明らかにチャンミンの歌声もユノの歌声も伸びが違うのを感じる。

韓国語バージョンの方が歌声に伸びがあり、声量もある。またリズム感もいい。チャンミンもユノも伸び伸びと歌っているのに対し、日本語バージョンでは、声が出しにくいという印象を持つ。

これはジェジュンの記事にも書いたように、韓国人が日本語を歌うということが如何に難しいかということの現れだと言える。記事にも書いたように日本語がどんなに堪能であっても、話言葉の日本語の発音と歌言葉の日本語の発音では、発声ポジションに違いがあり、話言葉のポイションで歌えば、日本語が不明瞭になる為、ポジションを変える必要があり、それは日本人でも難しい作業であるということだ。

その難しさが、やはり二人の場合にも現れているということだと思われる。どうしても伸びや声量がコントロールされる為に、楽曲として、やや縮こまった印象になる。しかし、エイベックスのしっかりとしたサポートと歌い慣れているHUG氏の歌詞ということで随分、問題点は解決されているように思う。

 

富士山さんの記事  「東方神起★新曲を絶賛しないワケ(猛毒)

にあるように、楽曲的にはJamiroquaiの曲調を彷彿させる手法が使われている。

私は洋楽に詳しくないから、最初聴いたとき、どことなく懐かしい感じがしたのはどこかで聴いて記憶に残っていたのかもしれない。確かにJamiroquaiの手法に似ている。それが洗練された都会の匂いを感じさせる。

韓国語バージョンでは綺麗に音色が整えられている。チャンミンの明の音色に対して、ユノの暗色の対照的な音色が映えて、二人のハーモニーが成立している。

 

5人から2人になったとき、一番最初に思ったのは、ハーモニーを作ることが難しくなった、ということだった。

私はジェジュンファンだったから対岸にいて、客観的に思ったのが二人の音色が同じ傾向だということだった。5人の中でも2人の音色はよく似ていた。どちらもストレートボイスでビブラートを持たないタイプであり幅があるタイプでもなかった。その為にハーモニーを作るのが難しいのではないかと思った。

 

今回、この曲を聴いて感じたのは、2人の音色がそれぞれに単体で成り立っている、ということだ。

チャンミンの音色は無色に近くハイトーンでは綺麗な細い響きをしている。それに対し、ユノの低音は少し混濁した甘い響きであり濃色だ。

2人の音色が明らかに違うのを感じた。それは2人で活動している10年という歳月の中でそれぞれが自分の色を確立してきた証のようなものである。

さらに高音域をチャンミン、低音域をユノが担当することで、パートの住み分けがきちんとなされ、中音域では2人のユニゾンで統一された音色が確立されている。

こうやって分析してみると、きちんと2つの色が存在しているのであり、この2つの色のハーモニーによって、東方神起の音楽は、5人の頃とは全く違う色彩の世界を確立しているのだと感じる。

 

分裂後、除隊後は大きくKPOP路線に舵を切ったと感じる東方神起だったが、2人の音楽のハーモニーの世界はきちんと成立していることがベースになっているからこそ、5人神起とは違う色の世界が完成されている。

 

2人神起の音楽の世界は、KPOPとJPOPの融合の世界である。

韓国バージョンと日本バージョンの世界観に差異がないのは、彼らがKPOP音楽にJPOPの色調を融合させることに長けているからであり、それは5人神起の頃の徹底したJPOP音楽の消化がベースになっているからとも言える。だから日本語の歌詞になった時の世界観がきちんと表現できると言える。

2人の東方神起が他のKPOPグループと異なるのはJPOP音楽との融合であり、それは日本で長年活動した経験を持つ彼らにしか成し得ない世界である。

 

15周年を迎えて、彼らの音楽がどこに向かっていくのか非常に興味深い。