昨夜は玉置浩二のシンフォニックコンサートに行った。

ひと言のMCも無し。

途中休憩を挟み、ただ彼の歌のみの2時間。アンコールを含めて16曲を歌いきった。

20分の休憩を挟んでの2時間のコンサートは決して長くはない。むしろ短いぐらいだろう。

しかし、時間の短さなど感じさせない濃密な時間だった。

前半は私のように彼のファンでない人間からすれば、知らない曲が多かった。

彼の生歌を聴くのは初めてだ。

後半は私にも馴染みのある曲のオンパレードだった。

彼は丁寧に歌を紡ぐ。

彼の生歌を聴いて最も印象が異なったのはこの点だった。

私は彼はパワフルでエネルギッシュな歌を歌う人だと思っていた。

そういうイメージで臨んだコンサートだったが見事に印象を覆された。

繊細で非常に細やかな歌を歌う人。

言葉の一つ一つを丁寧で紡いでいく。

非常に繊細で微妙な音楽の世界を作り上げていく。

ときおりマイクを外して歌う肉声。

マイクを通さなくても歌詞の一つ一つが明確に聴こえ、声の色の変化は見事だ。

ピアニッシモの歌声は、細い糸を通すかのように繊細さを秘めて会場の隅々まで行き渡った。

この繊細さが彼をあれだけの不安定さの数々に貶めていったのだとわかった。

彼がチョイスする歌声は、その言葉を引き立てていく。

数ある歌声の中からどれを彼がチョイスするのか、その組み合わせによって完成してくる歌はまるで一枚の絵画のようだった。

派手なレーザー光線もゴージャスな舞台装置もない。

ただオーケストラがいて、1本のマイクとスポットライトがあるだけの世界。

下手から出て下手にはけていく。それだけの世界。

ときおり、歌の表情に合わせて照明の色が変わるだけ。

それで十分な世界だった。

観客は玉置浩二の歌声を堪能しに来ただけだ。

そこには何の演出も必要ない。

ただ彼が歌いさえすればいい世界だった。

彼の歌に酔いしれた。

アンコール曲の「田園」は彼の歌のテクニックの高さをあらためて認識させるものであり、非常にエネルギッシュな彼の音楽の世界だ。

その反面、「メロディー」は一転、静寂の世界に引き込んでいく。

彼の動と静の世界。

まさに圧巻だった。