香取慎吾のドラマ「アノニマス」の主題歌。

彼自身が歌っている。

この曲を聴いて、香取慎吾は間違いなく進化しているのだと感じた。

4年前にジャニーズを退所して以降、決して恵まれているとは言えない環境の中でも彼は自分の信念に基づいて前に進んでいるのだとわかった。

彼を始めとするSMAPの元メンバー達の歩みは、確実に後に続く人達の励みになっている。

そして何より彼ら自身が新しい世界を見せ続けることに、既存の事務所に頼らない活動の可能性を感じさせるのだ。

 

正直なところ、私は彼のソロ曲を聴いたことがなかった。そして、SMAPを脱退したあとの彼が音楽活動をしていることも知らなかった。それぐらい、私の中では、香取慎吾は俳優のイメージが強かったからだ。このドラマは観ていたが、この曲の歌声を聴いても彼の声だとはわからなかった。

SMAPでの彼の歌声の印象もそれほど思い出せない。それでもSMAPの中では私は慎吾が好きだった。

彼の尖った部分がSMAPという既製枠の中に収まらないところが好きだったのだ。

いずれソロになる人は、グループにいても必ずどこかはみ出している。

そのはみ出し感が強ければ強いほど、ソロとしての可能性は大きい。

彼はそういうタイプだった。

 

この曲の彼の歌声の印象は一言で言えば、野太い。

しかし、非常に優しい歌声であり、ソフトなイメージの歌声だ。

正直、「慎吾ってこんな歌声だったかな?」と思った。

それぐらい、SMAPの熱心なファンでもなかった一般視聴者の私には、彼のイメージはいつもパフォーマーというイメージと自分の意見をハッキリ言える人、というものだった。

 

この曲の音域はそれほど広くなく、彼の中声域にピッタリの音域と言える。

またメロディーラインは同じラインの上を繰り返して行く形で展開されており、響きが固定化しやすい。

鼻腔に響く中音域は彼の歌声の特徴をよく生かしている。

フューチャリングしているwonkの歌声が高音を取り、彼が低音を取るハーモニー部分は二人の音色がピッタリで、流石に長年グループでハーモニーを作ってきただけのことはあると感じた。

 

ついでと言ったらファンに怒られそうだが、いくつか動画があったので観てみた。

正直、驚いた。こんなに彼は歌っていたんだ。知らなかった。

そしてそこには私の知ってるSMAPの香取慎吾がいた。

ちょっとお茶目で、パフォーマンスの好きな彼。

ああ、慎吾は何も変わってない、と思った。

変わったのは、アーティストの部分で、パフォーマーとしての部分は色濃く残っていた。

 

今回の「Anonymous」は進化したアーティスト香取慎吾の一面だ。

俳優ばかりして行くのだと思っていた私の認識を変えさせる一曲だった。