昨年、紅白にも出場した話題のユニットだ。

動画配信サイ「THE FIRST TAKE」の原点である「THE HOME TAKE」で火が付いた。

再生回数は、実に7500万回を超える。

「小説を音楽にする」という新しい視点からの曲作りで今までにない音楽と文学の一致した世界を表現。

シンガーソングライターikuraとボーカロイドプロデューサーAyaseの2人からなる。

 

 

ボーカルのikuraの歌声は非常に細く繊細である。

高音域が中心のメロディーは、彼女の繊細で綺麗なストレートボイスが一番映える音域を使って楽曲が作られている。

「夜に駆ける」は、非常にアップテンポな曲で、メロディーラインも高音から低音までをジェットコースターのように行ったり来たりする。

最近、この手の楽曲が非常に多い。

アップテンポと低音から高音までの高速展開のメロディー。

この特色が最近のJPOPの傾向であり、これが実は歌手の声帯に非常に負担をかけていて、声帯炎が増えている原因であると、声帯専門のボイスクリニックのドクターが警鐘を鳴らしているものでもある。

この高速のメロディー展開に対応する歌い方はただ一つ。

力を抜いて響きだけで歌うことだ。

しかし、響きだけで歌うというのは、実は簡単なようで非常に難しいテクニックである。

 

先ず、口周りの筋肉や舌根の力が抜けていなければならない。

その上で響きは鼻腔近くの顔の前面に固定されていることが必要になる。

なぜなら、顔の前面に響きが出てこないと、声が内にこもった響きになり重い歌声になるからだ。

さらに口周りの筋肉の力が抜けていないと、高速でのタンギングが間に合わない。

即ち、喋るように歌うことが求められる。

そこには、どこにも力みがあってはならないのだ。

 

これらの部分をボーカルのikuraは見事にクリアしている。

彼女の細い響きの歌声は、一定の場所に固定され、不要な力が入っていない。

おそらく彼女は話すように歌っている。

ただ話す時よりも少しブレスを多く送っているだけなのだ。

 

この楽曲は、彼女の細い歌声の特色を十分に生かしている。

 

使われている歌声は、ミックスボイスとヘッドボイスだが、このボイスチェンジが非常にスムーズであり、高音部とサビの高速部分は、ほぼヘッドボイスだ。

彼女の歌声の特徴は、ミックスボイスとヘッドボイスの音色に大きな差異が見られない。

どちらも細く透明的な音色をしている。

ストレートボイスだが、直線的な響きのキツさは感じない。

 

ボーカロイドのAyaseのコンポーズした楽曲の特色に彼女の歌声が非常にマッチして、独特のサウンドを作り出している。

 

こういうジャンルの音楽があるのも、JPOPの多角的な一面をよく表していると思える一曲だ。