歌いだしは、非常に慎重でかつ、丁寧な響きで始まる。

 

言葉が非常に立っており、文字の一つ一つが、鮮明に響いている。

 

この人の声の特徴は、繊細で透明感溢れる声と濃厚な響きの声の二種類がうまく使い分けられていることにある。

 

 

1番は、全体を通して、繊細な響きの透明感のある声で歌われる。

 

印象的なサビのメロディーに関しても、1番では、丁寧に大切に歌われる。

それは、慎重にかつ、ゆっくりと音楽の進みを始めるという感じに似ている。

 

前へ前へと進もうとするメロディーに対して、歌い手として、「まだよ、まだよ」と言っているように聴こえる。

それが、我慢しているというよりは、慎重に音楽を前に進ませようとする彼女の繊細な心遣いを感じさせる。

 

 

2番になると少しアップテンポになり、音楽が動き出す。

 

リズミカルにメロディーが刻まれ、それに合わせて彼女の歌声も少し明るく楽しさを感じる。

 

2番のサビでは、力強い歌声に変わる。

濃厚で、決然とした歌。

 

今まで横に流れていた音楽が、サビと共に前へ前へと進み、尚かつ、縦に刻まれる。

 

それに合わせて言葉の発音も角の立った歌い方になり、サビの展開部では、さらに歌い手の強いメッセージが聴衆に渡される。

彼女の歌に涙する人が多いのは、この歌のサビの部分が持つ甘美なメロディーと彼女の歌声が、相まって琴線を刺激するからである。

 

それほどに、この部分のメロディーは、彼女の少しハスキーで、それでいて、濃厚な歌声を引き立たせる。

 

 

そして、終結部。

 

最初のメロディーが静かに繰り返される始まり。

 

彼女の歌声は、透明で美しい。

 

細く美しい、まるで雪の結晶のような繊細な美しさを醸し出しながら、さらにだんだんと力強く濃厚な響きへと変わっていく。

 

もう一度、もう一度、何度でも、聴衆に、物悲しいメロディーが手渡されていく。

 

最後のセンテンスへと歌い収めていく部分。

 

歌の語尾に被ってくる単音で響くピアノの音が、まるでキラキラと降り落ちてくる雪の欠片のように、透明な彼女の歌声と共に浮き上がる。

 

彼女の繊細な声だけがいつまでも聴衆の耳の中に残っていく。