この曲も2013年発売のソロアルバム「WWW」から。

この曲は韓国語で歌われている。

韓国語で歌う方が彼の場合、声の状態がいい。

なぜなら韓国語の言語ポジションはフロントボイスのノーズポジションにあるからだ。

これは韓国語だけに留まらない。中国語も英語もフランス語もドイツ語もイタリア語も…

即ち、日本語以外の欧米諸国、またアジア圏の言語はすべてフロントボイスポジションで発音されていると考えてもいいぐらい、日本語以外の言語においては、ノーズポジションに発音が乗りやすい。

その理由はもう何度も説明している。

日本語だけが単純な5つの母音の言語であり子音だけで終わる単語や複雑母音の単語を持たない。それに対し、他言語は複雑母音や子音だけで終わる単語を持つ言語だ。それゆえに日本語は発音において、下顎だけを使って発音できる言語であり、さらに口を縦に開けて発音される。これに対し、他言語は上唇を使って子音の独立した発音と母音との組み合わせによって発音されることが多く、さらに全体に口を横に開いて発音されるものが多い。それゆえ、発音が上唇から鼻腔に抜けるポジションになりやすく、それが言語の明確さと響きの通りの良さに繋がっている。要するに、普段の会話から他言語はノーズポジションで発音しており、これがフロントボイスのポジションと同一になる。

 

その原則から言うと、彼の歌声も韓国語の歌詞になれば、自ずとノーズポジションで発音されることになり、声の響きが顔の前面に出やすくなる。

この曲はさらに彼の最も出しやすい音域である中音域を中心にメロディーがずっと展開されており、彼にすると非常に歌いやすい音域と言えるだろう。その為、この日の彼の歌声もこの曲に限って言えば、非常に安定した濃厚な響きの歌声になっている。

うまくノーズポジションに響きが乗った、という印象を持つ。

 

彼のこの歌声と以前日活していた頃の歌声のどこが違うかと言えば、歌声の響きの濃厚さと透明度にあるかもしれない。

以前の彼の歌声は、もう少しブレスが混ざった透明度の高い歌声をしていたのは確かだ。

歌声は加齢と共に響きが太くなる傾向を持つ。

これは何も彼だけに限ったことではなく、誰もが経験していく道になる。

だからこの曲のような歌声である限り、それほど悪い状態のようには思えない。ただ、昔の歌声に比べると音色が変わった、というだけの話である。

高音部もそれほど突き上げて歌わなくとも歌えるのは、韓国語の発音自体がノーズポジションに乗っている為、そのポジションに声を固定したままで音だけあげれば、それほど喉に負担をかけることなく歌えるからかもしれない。

またこの曲においての高音域はほんの一部分であり、ハイトーンボイスと言うほどのものでもないからとも言える。

 

いずれにしても、この曲は安定した歌声の部類に入るだろう。

コンサートの中盤になり、身体が温まってきてエンジンがかかってきたのかもしれない。

冒頭の数曲のようなハスキーさは影を潜めている。

残りの曲や日本語の曲がどのようになっているのか、一つずつ検証してみたいと思う。