聴き終わった瞬間、上手い、と思った。

そう、三浦大知は本当に上手い。

どうしてこの人はこんなに上手いんだろうと考えた。

 

安定している。

 

この言葉が一番ピッタリくる。

そう思った。

彼の抜群の安定性が音楽を安定したものにしている。

 

彼の安定性とは何か、と考えたら、それは精神だと思った。

そう彼は非常に安定した精神の持ち主だと感じる。これが他の歌手とは違う彼の強みだと思う。

城田優も非常に安定している。しかし城田優の安定感は、スケールの大きさ、深さの安定感であり、三浦大知の安定感は恒常性の安定感だと思う。

 

彼の音楽には闇がない。澄んでいて濁りがない。迷いがない。

無駄のない非常に整備された音楽の世界であり、そこには音以外の雑念がない。

それは彼の精神のタフさ、感情の安定感、冷静さ、客観性、距離感という本質的なものがそのまま彼の音楽の世界に投影される。

非常にシンプルな世界だ。

そう彼の音楽は、シンプルで「音の世界を具現化する」という以外の何物もない。

その安定感がいつも彼の歌を聴くと、上手い、と感じさせるものなのだろう。

 

この日の「I’m Here」は、大編成のストリングスをバックにコーラスを従えて彼一人のパフォーマンスだった。バックダンサーのつかないパフォーマンスは、歌の部分が非常に強調されたものになった。

彼の歌唱力がそのまま反映されたものとなり、MVとは全く違った世界観を与えた。

ストレートでピンと張った彼の歌声が真っ直ぐにハーモニーの中心に据えられ、その音を大編成のストリングスが下支えし、コーラスが彼の歌の周りを囲み多重構造の音楽の世界になった。

柔らかいコーラスの歌声と彼のピンと張った響きのある歌声が対照的で、彼の音質が際立たせた。

 

安定感のある堂々とした歌は、この人の精神が非常に落ち着いていてバランスの取れたものであることを感じさせる。さらに彼の音楽には迷いがなく濁りがない。

彼を中心に音が周囲を飛び回り、明るく純粋に音を楽しむ世界が構築されていく。

これが三浦大知の音楽の強力な武器だ。

彼の音楽を聴くとシンプルに楽しいと感じさせる所以がここにある。

 

 

三浦大知は本当に上手い。

これほど確立した世界を構築出来る人は非常に強い。

あらためてそう感じた。

だから純粋に「音の世界を楽しむ」為に彼のライブに行きたくなる。

シンプルに音楽を楽しむ為に。

雑念を捨て去って、彼と一緒に楽しみたくなる。

 

彼は稀代のアーティストだ。