11月30日に朝日カルチャーセンター湘南教室で開催された「日本の流行歌、その秘密と魅力」に参加した。
講師は二松学舎大学の塩沢教授で万葉集を専門としている。
今回は、万葉集とJPOPを「歌」という同じ視点から紐付けすることで歌詞に使われている言葉を多角的に分析するというセミナーだった。
ドリカムの「未来予想図」、宝塚歌劇の「すみれの花咲く頃」、渡哲也の「くちなしの花」そして三浦大知の「Two Hearts」「IT’S THE RIGHT RIME」「片隅」「HIKARI」が取り上げられた。

ドリカムの「未来予想図」の歌詞の言葉から二人の関係が対等な関係であり、未来まで続いていることを客観的に予想している(これが「未来予想図II」に繋がっていくのだが)ことや、フランスのレビュー曲「リラの花咲く頃」がなぜ、日本では「すみれの花咲く頃」に変わったのか、作詞者白井鐵造の隠された想い、また「くちなしの花」のある部分の歌詞が実は伊勢物語や古今集の古典から着想を得た歌詞であることなど、非常に興味深い内容だった。

最後に三浦大知自身が作詞した曲4曲を取り上げ、彼の言葉遣いの特徴を人間の五感の感覚から捉えている言葉であるという分析は非常に面白かった。

確かに三浦大知の曲の全曲レビューを書いてみて感じることは、非常に感覚的な歌詞が多いということ。
絵画的であり、そこに情景が描き出される。また、前向きな歌詞が多く、自分一人で乗り越えていくというよりは一緒に手を繋いで乗り越えていこうという意味合いの歌詞が多いことを感じる。

その部分を塩沢教授は、人間の五感を用いているという観点から紐解く。この着眼点は教授独自のもので、長年、JPOPを言葉の面から研究し、三浦大知はFolder時代からのファンというだけのことはある。

確かに「ノックする」「耳を澄ます」「握りしめて」「離したりしない」「聴こえるよ」「手を振る」「耳を塞ぐ」など、三浦大知が作る歌詞には、視覚、聴覚、触覚という人間の五感に分類される文章が多い。

特に新曲の「片隅」は視覚と聴覚にまつわる言葉が多いし、「HIKARI」では「光と闇」「越えていく」「繋がっていく」というキーワードが散りばめられ、一人ではなく、一緒に乗り越えて行こうという非常に前向きな歌詞になっている。

三浦大知と言えば、どうしてもその秀逸なパフォーマンスに目を奪われがちだが、このように歌詞を五感的感覚で捉えてみると、彼が非常に感覚的に鋭く豊かな言葉の持ち主であることを感じる。
それが彼独特の客観性に落とし込まれて、感覚的なのに距離感のある世界が描き出されていると感じた。

言葉を五感で紐解く今回の分析が非常に面白く、他の歌手の歌詞はどうなっているのだろうかと確認してみたくなった。

非常に有意義なセミナーだった。