アルバムの3曲目は、その音楽もさることながら、MVで今までの氷川きよしのイメージを完全に壊したと言えよう。

正直なところ、ここまで彼が歌えるとは思わなかった。

「キニシナイ」はEDM。即ち、エレクトロニック・ダンス・ミュージックだ。

EDMとはいわゆるクラブなどでDJによって演奏されるミュージックが主流で、この曲も当然、クラブなどで今後演奏されるに十分耐えうる音楽だ。

彼の歌声に被さってくるサブメロディーの部分は完全にテクノボイス。

サビで繰り返されるフレーズは一度聴いたら耳に残る中毒性のあるフレーズだ。

このサビでの歌声を聴いて、「氷川きよし」だと思う人はどれぐらいいるだろう。

それぐらいこの曲の彼の歌声は今までの彼のイメージからは程遠い。

どうせ壊すなら、これぐらい徹底的にやった方が気持ちがいい。

 

この曲ではAメロでは言葉のエッジを立てて、切り気味に歌う。

それに対し、Bメロでは一転、甘い歌声でレガートな滑らかな歌い方になっている。

対照的な歌い方をすることでEDM音楽の世界を際立たせている。

 

今回のアルバムは彼の持つ新しい音楽面がたくさん詰まっている一枚になっている。

このまま突っ走って、彼がどんな世界を見せてくれるのか非常に興味深い。

まさにこの曲のタイトル通り、彼は何もキニシナイ・

そこに彼の潔さがある。