この曲も全く違う彼の歌声が聞こえる。

全編が甘い歌声であり、色彩の濃い歌声である。

この歌声を聴く限り、もう演歌の影はどこにも見当たらない。

そしてこの歌声が氷川きよしの昔からの歌声だったように感じるほど自然で今の彼のイメージにあった非常に魅力的な歌声だ。

ここまで聴いてきてこのアルバムで彼の多くの歌声を聴いてきたが、おそらくこの歌声が一番魅力的だと感じる。

音程を下から取っている。下からしゃくり上げるように音を取って歌っているのだが、これが彼が歌うと非常に魅力的な歌声になる。

この曲は、全体的に音程を下からすくい上げるように取っていくことで、甘い歌声を作り上げている。普通、このように音程を取ると突き上げたような歌声になったり、音が下がったりするのだが、彼の場合はそうはならない。音の響きは扁平的で、いつもの彼の縦長の奥深さは無い。

甘く少し鼻にかかった歌声は、そのままの音色で低音域から高音域までを移動する。絵は他の曲のいくつかに見られるような低音域の力み感がなく、音色も統一されている。おそらく彼にしたら非常に力を抜いて歌っているのでは無いだろうか。鳴りのいい張りのある歌声の持ち主である彼は、これぐらい力を抜いて6、7分程度の歌声で歌うと非常に魅力的な声になると言うことの証明にもなる一曲だ。

 

リズミカルなテンポ感の中で音楽がゆったりと前へ進んでいくバラードロック。

縦に刻まれるテンポの中で、横へエネルギッシュに歌声が繋がれていく。

サビのコラボした歌声とのハーモニーの交錯が立体的多重構造になっており、しっかりした建築物であることを醸し出している。

ここでも彼の音楽的素養の奥深さが発揮されている。