三浦大知がライブ予定日だった日の夜に自宅から1曲配信する8回目は、「The Answer」だった。
この曲は私も彼の歌声を検証するときに何度も繰り返し聞いた記憶がある重要な曲だ。
即ち、彼がこの曲から歌声を変えたからである。
長く歌い続けてきた歌手には、必ず転機になる曲が存在する。
三浦大知が今後も長く歌手人生を続けていく中で、間違いなく転機だったと記憶される曲がこの曲だと私は思う。
なぜならそれまでのチェストボイスの歌い方から、ミックスボイスでフロントボイスの唱法に変えた曲だからだ。
体験ボイスセッションをしていて質問される中に、「フロントボイスはミックスボイスやチェストボイスとどう違うのですか?」と聞かれることがあるが、チェストボイスやミックスボイスは、「声の種類」の名称であって、「フロントボイス」は歌い方の名称である。だから、ミックスボイスでもチェストボイスでもヘッドボイスでもファルセットでも、フロントボイスになっているかどうかは、その発声ポジションをどこに取り、身体のどこに歌声を響かせているかに依る。
どんなに綺麗なミックスボイスを出していてもフロントボイスのポジションになっていなければ、それはフロントボイスとは言わない。逆に混濁した響きのチェストボイスであっても、顔の前面に響かせていれば、それはフロントボイスと言える。
同じ「ボイス」という言葉を用いている為に「フロントボイス」は声の種類と混同しがちであるが、実際には「顔の前面で響かせた声」ということになり、厳密には唱法の名称だ。だが、わかりやすく声の名称として使っている。
それからいうと、彼の歌声はこの曲を境にフロントボイスへと変わったと感じる。
高音に伸びが出て、中・低音域は綺麗に顔の前面で響くようになった。それまではチェストボイス、いわゆる地声なので、伸びも響きも、音域の広がりも今一つのように感じる。
その曲を彼は昨夜、歌っていたが、歌の冒頭から、フロントボイスのポジションでビンビンに響いていたのが印象的だ。
中音域における彼の声は非常に綺麗に響いて、おそらくその場にいれば、声の振動を体感出来るほど響いているに違いない。
鼻歌のように自然なポジションから歌い始めることが出来るのもフロントボイスの特徴で、彼のこの日の話声は、既に綺麗なフロントボイスポジションでの会話になっていた。
このようにライブ予定日に一曲配信してくれるというのは、ファンにとってはこの上ない幸せだと感じる。
そして簡潔に自分の思いを伝え、一曲歌って、簡潔に配信を終わる、というのも彼らしいと感じた。
この客観性と距離感が三浦大知の持ち味だ。
リモート映像を観ると、歌手の素の姿が見れて面白い。
これもコロナのおかげと言えるだろう。
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