2020年に発生した(一説によると2019年秋に既にコロナウイルスは中国で確認されていたとの情報もある)コロナによって、多くの業界が影響を受けた。その影響は全世界的に派生しているが、音楽業界に与えた影響は計り知れない。

飲食業や販売業などの業種は、時間短縮、また一定期間の自粛期間ののちに営業再開が可能である。しかし、エンタメ業界や音楽業界に於いては、未だに活動そのものが出来ないことが多い。

音楽業界では特にそれはLIVEにおいての影響が甚大である。

 

2000年を境にして、音楽業界の活動の仕方は大きな変換をした。

即ち、1970年代からの数十年間は、いわゆるCD全盛期だった。

CDの売り上げが何十万枚というのは珍しくなく、ミリオンセラーの大ヒット曲が生まれたのもこれらの時代だ。

歌手は先ずシングルでデビューを果たす。

その楽曲がどれぐらいヒットしているのかは、CDの販売枚数で決まる。

オリコンチャートというランキングサイトが生まれたのもこの時代だし、次々、ヒット曲が生まれたのもこの時代だ。多くの歌手は少なくとも一年に3〜4枚のシングル曲を発表し、数年ごとにアルバムを発売する。

活動の主流はテレビの音楽番組であり、そこにどれぐらいの頻度で出演しているかによって、その歌手の評価が決まる。

そして、歌手はコンサートを開く。

そういう活動が主流の時代だった。

しかし、今は違う。

CDの売り上げは減少し、音楽番組も減少した。

多くのアーティストは活動の場所を「ライブ」という場所に移している。

それまでのCDを販売し、それを購入する、という一方的にアーティスト側から提供されたものを受け取る、という提供側と受容側との関係性から、

同じ空間で同じ時間を過ごし、同じ体験をする、一緒に音楽を作り上げていくという共同作業の関係に変わっていったのである。

恒常的にな音楽番組の視聴率は低迷しているのに対し、単発的な特別番組、即ち、FNS歌謡祭や音楽の日、またスーパーライブ、といったような番組の視聴率が好調なのは、番組制作側が、いわゆる提供一辺倒の音楽番組の作り方から、

視聴者をスタジオに招いて、ライブ感覚で番組を作る、という一体型の番組制作に変わっていったことが大きな原因と考えられる。

このように、現代の音楽業界において、「ライブ」という活動は、なくてはならないものになったのである。

ひと昔前は、放送媒体にあえて出演しないことで一つのステータスを築いたアーティストもいるが、現代ではYouTubeやTikTokのようなネット媒体からブレイクしてくるアーティストも数多くあり、ヒット曲も生まれている。

放送媒体に出演しなくても、いくらでも活動の方法があるのが現代の特徴でもある。しかし、彼らが大切にしているのは、直接、ファンと触れ合いの出来る空間。それがライブなのである。

この活動が、2020年以来、ほぼ出来ない状況になっている。

ライブが出来ない、ということは、アーティスト本人や事務所の大きな損益に繋がるだけでなく、それらの活動に関わる全ての業種の人達に影響を及ぼしている。

例えば、ライブに音響は必要不可欠だが、ライブがないということは、それらを担当する人間の仕事はないことになる。同様に照明や舞台装置、また、バンド関係者、ひいては、ホール関係者全ての人間の仕事を奪う状況になっている。

多くの音楽関係者は、常日頃から音楽だけで食べていける人間は少ない。

何某かの副業や、仕事の掛け持ちは、常態化しており、特にバンド関係者に於いては、フリーの立場を取る人が多く、仕事の依頼そのものがなければ、生活に支障をきたす状況に追い込まれる。

そうやってこの2年、多くの舞台関係者や音楽関係者が仕事を失ってきた。

コロナ感染の中でもライブやコンサート、イベントを開くのは、アーティストや事務所の利益を守るというよりは、「それを行わないと、舞台関係者が食べていけないから」という声を何度も聞いた。

今、コロナの第6波で、次々、ライブやミュージカル、演劇など中止や延期の事例が増えている。

運よく開催されているものでも、会場に行けば、慎重な感染対策が取られており、非常に緊張した雰囲気の中で挙行されているのが現実だ。出演者を始め、舞台関係者は全員に毎日PCR検査が義務付けられており、1人でも感染者が出たらアウト、という緊張感の中で行われている。

 

私のメールの受信箱には連日のように多くのライブやイベントの告知情報が届く。

業界としては1日も早く、活発な活動を行いたい、というのが本音だろう。

 

MISIAが

「ライブは本当に不要不急の用事なのか、と思う」という言葉の重さをあらためて感じる。

 

布施明は、

「ライブは歌手にとって最も重要な活動。ライブによって、ファンとの交流を図り、ファンの存在を確かめ、ファンからのエネルギーを貰って、歌手は歌おうというエネルギーに変換していく。またライブによって成長していく。

目の前に人がいない空間でどれだけ歌っても、それは歌手を成長させる力になるとは言えない。

目の前に人がいてこそ、歌手は力を得ていく」

という発言をしていたのを思い出す。

彼ほどの大ベテランですら、そのような感覚なのだから、そこまでに至らないアーティスト達が不安に思うのは当然の結果だろう。

歌手は普段、ファンと交流することはない。

唯一、交流できるのがライブの空間であり、お互いの気持ちを確認し合う唯一の貴重な時間なのである。

アーティストはファンから力を貰い、ファンもアーティストから活力を貰う。

この相関図が成り立つ空間は、ライブしかないのである。

 

今後もコロナだけでなく、未経験のウイルスによる感染は流行するだろう。

ウイルスとの共存の中で、どのようにアーティストの気持ちを守り、ファンとの繋がりを守り、音楽業界の活性化を行っていくのか、一つの岐路に立たされているのかもしれない。

 

予定されているライブやイベントが滞りなく開催されることを願ってやまない毎日である。