リクエストを頂いて、手越祐也が歌った「猫」を聴いた。
この曲は俳優でもある北村匠海が歌い、昨年ヒットした曲だが、手越祐也がカバーした曲を聴くと、歌手と俳優の歌の違いというものを感じる。
昨今では歌手でありながら俳優業をしたり、俳優でありながら歌を歌うという、歌手と俳優の両方を兼ね備えた人が多く見受けられるが、どちらの職業を主においているかによって、やはりそこには表現の違いというものが現れるように感じる。
この曲で、手越祐也の歌声は中音域から低音にかけて甘く響いている。
また高音に従って、甘さが取れていくのだが、フレーズの処理、言葉の処理がオリジナルの北村匠海の歌に比べると緩急のリズムと強弱を伴ったものになっている。
これは彼がやはりミュージシャンで、音楽の上に言葉を載せていくという感覚であり、フレーズの最後の言葉が横に流れながら、次のフレーズに入っていくところなどは、音楽の流れが主体で歌っているという印象を持つ。
これに対し、北村匠海の歌は、言葉の流れの処理が全体的になだらかであるにも関わらず、一つ一つの言葉が立ってくるのは、言葉が主体で歌っているように思える。
これが言葉を主体とした表現が職業の俳優と、音楽を主体とした表現のミュージシャンの違いであると感じた。
手越の歌は非常にエネルギッシュである。
そして彼独自のリズム感覚の中で音楽を横に流してくる。
その為にフレーズのリズムの最後が曖昧になり、切れ目なく次のフレーズへど繋がっていく。
それゆえ、この曲がエネルギッシュなものになっているのだと感じた。
そして力強い歌声には、彼の意思の強さが反映されているように感じた。
自己を表現するという点で彼はソロに適している。
それにしても彼の歌声は魅力的で、中・低音部と高音部では違う色彩と響きを持つ。
グループを脱退したことで、かえって、歌手としての彼の魅力が多くの人に認知される機会になり、事務所のしがらみに縛られることなく、多くのミュージシャンやクリエイターとコラボする機会があればいいと思う。
そういう活動を続けていく中で、歌手としての活路が見出せればいいと思った。
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