Adoの最新曲『向日葵』

この曲で、Adoはまた新しい顔を見せたと感じた。

Adoと言えば、『うっせぇわ』の挑戦的な歌で一気に存在感を示した。

全く顔を見せず、挑戦的な歌詞と共に少し怠惰な歌声だった。

少し斜め下からことばを発音しているような印象の歌声で、何もかも斜めから見ている。

そんな印象の歌と図太い歌声を披露していた。

アウトロー的な存在感を示した音楽と歌声で一気に多くの人を惹きつけた。

その印象を一気に覆したのが映画「ワンピース」のウタだった。

「ワンピース」に登場する歌姫ウタのボーカル部分の吹き替えに彼女の歌声が起用されたのだった。

中田ヤスタカが作詞作曲した『新時代』で、彼女は、彼女自身の持つ歌唱力を遺憾無く発揮した。

多くの人がAdoという名前と共に記憶している『うっせぇわ』の楽曲から抱くアウトロー的な印象を見事に覆し、アニメのキャラクターであるウタという世界的な歌姫のキャラクターを見事に演じ切った歌声を披露した。

伸びやかな高音、明るい音色、ピンと張った響き。

これらは、『うっせぇわ』の楽曲のアウトロー的で暗めな音色とはまるで正反対の様相を見せる歌声だった。

この『新時代』の楽曲を始めとする映画で歌われた7曲の楽曲によって、彼女は実に多彩な歌声を披露したのだ。

それは、Adoという顔を見せない歌手の存在感を圧倒的なものにするのに十分だったと言えるだろう。

ウタというキャラクターで、伸びやかな歌声や広域に渡る音域を披露した彼女が今回、歌っているのが『向日葵』

この曲は、ドラマ『18/40〜ふたりなら夢も恋も〜』の主題歌になっている。

この曲で、彼女はまた新しいイメージを自分に書き加えた。

やや透明的な響きの歌声で訥々と歌い出す最初のフレーズから、だんだんと色味を帯びて濃色になっていく歌声の変化を楽しむことが出来る。

即ち、彼女は、自分の中に持つ淡色の歌声と濃色の歌声という2種類の歌声の響きを完全にコントロールしながら、フレーズによって歌い変えていくのである。

そして時には、その歌声は、『うっせぇわ』のAdoであり、『新時代』のウタであるというように、さまざまな歌声の顔を見せていくのである。

それにしても、声量たっぷりと歌い上げていくコントロール力は見事だと感じた。

彼女が、自分の中にある対象的な歌声を使って、今後、どのような世界を見せてくれるのか、非常に楽しみだ。