3月に発売された新曲のTV初披露。ダンシングチューンだ。
軽快なリズム。東方神起時代を思い起こさせるR&Bの世界だ。
この日、初めて彼のパフォーマンスとこの曲の生歌を聴いたが、この曲において、大きく2つの点で彼の変化を感じた。
そのことについて書いてみたいと思う。
彼は東方神起時代、多くのR&Bの楽曲を歌ったが、この時期にR&Bを日本語で歌う能力を培ったと私は思う。
その最たるものは、「Choosey Lover 」で、この曲は、どんなに言葉数が多くても縦リズムの中で処理し切るテクニックを披露している。
彼の甘やかな歌声はバラードがよく似合い、確かに上手い。
しかし、私は彼の日本語の言語処理能力はR&Bによって鍛えられたと思う。
R&Bは非常にアップテンポの曲が多い。
特に日本語でR&Bを歌う場合、速いテンポの中で抑揚のない日本語を処理するには高い能力を要求される。
リズム感、言葉の処理能力、日本語の持つ僅かなリズム感。
そういうものを感性の中に養っていなければ、日本語でのR&Bは、非常に怠惰な楽曲に成り下がる。
そういう点から見ても、この曲に於いては、速いリズムの中で細かな音符につけられた多くの言葉を処理し、小節内に収める能力が要求される。
またどんな言葉数や音符が多くても、縦のリズムの刻みを決して崩さないだけの高い処理能力が要求される。これが日本語でR&Bを歌うときに歌手を悩ませるものであり、しっかりとした歌声で歌おうとするとリズムや言葉の処理が遅れるという弊害を生じやすい。
この日本語特有の弊害を彼は見事に消化している。その能力があるからこそ、このアップテンポの曲の中で日本語が明確になってくるのである。
この曲は、今までの彼の日本語の曲の中で最も日本語が明確に立っているという印象を持つ。
それは、R&Bのリズム感と彼の日本語の処理能力によるリズム感が一致しているからに他ならない。
案外、バラードなどのゆったりとした曲調よりもアップテンポの曲の方が日本語を処理しやすい、という事実の現れでもある。
これは速いテンポの中で多くの言葉を処理しようとすると、どうしても口の動きが活発になる。口の動きを活発にするには、緩慢な動作から俊敏な動作に変えなければならず、そこにはどうしても唇を使って発音することが求められる。
上唇をほぼ使わなくても発音できる日本語も、速いテンポの中で多くの言葉数を処理しようと思えば、必然的に上唇を使わざるを得ない状態になり、その結果として言葉が明確になる、という効果を生み出すと考えられる。
それがこの日のパフォーマンスで感じられた第一点。
さらにもう一点、この日の歌声にはCDとの大きな違いを感じた部分があった。
それは彼の発声ポジションである。
この日の彼の歌声は見事にフロントボイス。
全ての歌声の響きが鼻腔に入って、久しぶりに綺麗な濃厚な音色を奏でている。
彼の初期の頃の特徴であったミルクのようなビロードのような音色。
アップテンポなので分かりにくいかもしれないが、見事に全ての音が鼻腔から顔の前面に抜けている。
鼻腔より上に入ってないのは、この曲の音域が高くない為であり、このまま高い音域になれば、おそらく鼻腔から眉間に抜けていくのではないかと感じる。
これは、CDや音源の歌声と比較して聴くとよくわかると思う。
私は以前、ラジオで音源を聴いたとき、レビューに彼の歌声が喉声になっていないと書いたが、確かに喉に落ちている状態ではなかった。しかし、フロントボイスのポジションに戻っているかといえば、そうでもなかったということが、この日の歌声を聴くとよくわかる。それほど、顕著に音源とこの日の歌声では違う。
2月の「The Covers」以来、彼の歌声は少しずつ少しずつ改善されてきたと思うが、この曲のようにアップテンポでは、以前のようなポジションに戻りやすく、どのように歌ってくるか非常に興味があった。
しかし、彼はこの曲でもフロントボイスのポジションに意識的に入れていた。
このポジションを彼がきちんと習得し直すのは、時間の問題だと思う。
彼自身が自分の声の状態を自覚したところから、修正は始まる。
ポジションを掴めば、あとはブレスの流れを掴み直すことで、伸びやかで透明な歌声は戻る。
現にフロントボイスのポジションになってからの彼の歌声は、若さを取り戻し、本来の艶が戻っている。
ブレスの流れを彼が掴みきれるかどうかは、高音部の発声とロングトーンで確認できる。
NHKの玉置浩二ショーの予告が流れているようなので、おそらく変更なく放送されると思われる。
彼が歌うのは「メロディー」
この曲では、それほどのハイトーンボイスにならない。
玉置浩二の歌声を聴いて、彼の歌声がどのように影響されるかも非常に興味深い。
なぜなら、歌手は、一緒に歌う人の影響を受けるからだ。特に彼のように相手の歌声をよく聴くタイプでは、玉置浩二のエネルギッシュで豊かな歌声と音楽性に感化されながら、歌うだろうと予想される。
能力の高い人とコラボすることで、自分の能力が引出される。
だから歌の上手い人とコラボすることは歌手にとって貴重な体験になるのだ。
彼の歌声がどうなっているのか、非常に興味深い。
※
彼がなぜ、フロントボイスのポジションから喉声に落ちてしまっていたのかの原因と思われる要因が私なりにわかったので、次の機会に記事にしようと思います。
この要因は彼のみならず、誰しもが陥る可能性のあるものであり、さらに最近のJPOP歌手に多発している声帯炎の要因ともなるものだと感じます。
例えば、今、活躍中のいくつかのバンドのボーカリストにおいては、何年か後には、声帯炎になる懸念を持つ人がいます。
そういう意味も込めて、記事には書きたいと思います。
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