歌手の健康にとって一番に重要な器官は、声帯だと多くの人は思うでしょう。

確かに声帯は歌声に直結します。

その為、声帯のコンディションに気を使う歌手は非常に多いのです。

ですが、実は声帯と同じぐらい重要な器官に鼻があります。別に歌手でなくても鼻が詰まると声が出しにくいという経験は多くの人がしているのではないでしょうか。

 

ジェジュンの記事を読んだ読者の方から「ジェジュンは副鼻腔炎を患っていると言っていたのですが、歌声と関係しますか?」との質問を頂いたので、彼だけに限らず、歌手にとっての影響について書いてみようと思います。
ただ、私は専門的な医師ではないので、あくまでも私が知る限りの知識と私自身や友人達の経験をもとに記事を書いていきたいと思います。

 

まず最初に「副鼻腔炎」というものが一体どういう疾患なのかということについて簡単に説明したいと思います。

副鼻腔炎(蓄膿症)は、風邪かぜのウイルスや細菌、アレルギーなどにより、副鼻腔の粘膜に炎症が起こることで発症します。風邪(ウイルスや細菌感染)やアレルギーなどがきっかけで鼻の中で炎症が起きると、鼻の粘膜が腫はれたり、ドロドロした鼻水が出てきたりします。この腫れや鼻水によって、副鼻腔と鼻の間にある通り道(自然口)がふさがると、副鼻腔から分泌物や異物を排泄できなくなり、鼻水や膿がたまってしまいます。こうして起こるのが副鼻腔炎(蓄膿症)です。(引用先 https://www.allergy-i.jp/hanadumari/genin/hukubikuu/

 

副鼻腔炎には急性と慢性の2種類があり、発症から4週間以内のものを急性、3ヶ月以上経っても治らないものを慢性と呼びます。
慢性には難治性のもの(なかなか治らないもの)があり、この為、ジェジュンもインスタのストーリーで「ああ、副鼻腔炎は本当に不治の病なのか?」とつぶやいたのかもしれません。
彼が難治性なのか、一体どのくらいの期間、患っているのかわかりませんが、6月8日に呟いているということは、それ以前には発症しているということになるでしょう。

ジェジュンの最近の歌声についての私の詳細な見解については今回のOSTのレビュー(有料記事)の中に詳しく書いていますが、彼に限らず、副鼻腔炎を患うというのは、声帯ポリープや結節といった声帯そのものの炎症と同じぐらい歌手にとっては重篤な疾患の一つになるかと思います。

 

「声を発する」のは声帯という器官(粘膜)に息が当たって振動するからですが、「歌を歌う」という行為は、これとは全く別の働きが必要になります。単に息が当たって声が出るだけでは歌にはなりません。長く声を伸ばすために多くの息が声帯に当てられます。このとき、振動して出た声を息の流れに乗せて身体のあちこちに当てることによって共鳴が起こり、それが歌声になっていくのです。

ですから、「歌手は身体が資本」とよく言いますが、声帯だけでなく、その声をあちこちに共鳴させる身体そのものが楽器になっていると言えるのです。

身体のどこに声を当てて共鳴させるかによって、歌声が大きく変わっていきます。

また発声法がさまざまな種類あるのは、共鳴させる時の場所とその場所へ声を当てるスタイルがそれぞれに違うからであり、その違いのよって、同じ歌手であっても、発声法を変えるだけで歌声が大きく変わるということはよくある話になります。

歌手達は、自分にとってのベストポジション、いわゆる一番楽で喉に負担のかからない場所を探すことによって、自分独自の発声法を身につけていくのです。

これは、誰1人全く同じ身体を持つ人間が居ないように(双子の場合でも全く同じ姿形にはなり得ません)歌声もさまざまであり、その共鳴させる場所もさまざまなのです。

但し、声を共鳴させるのに適した部分は存在します。共鳴は身体の空洞部分で行われるので、一番多い部分としては顔面ということになり、鼻腔、頬骨、眉間、額というのが共鳴しやすい空洞が存在する部分となることが多い為、この部分に声を当てて歌う歌手は多いのが実情です。

副鼻腔炎は、この空洞に膿が溜まる炎症で、空洞が膿によって塞がれてしまうことを言います。すると、息の抜け道が塞がれてしまうということになってしまうのです。

特に歌を歌う場合、大量の息を使います。身体の下方から上がってきた息が声帯に当たって振動し、さらに上へ上がって体から抜けていこうとする時にその空洞が塞がれている、ということになります。

鼻詰まりを経験した時のことを思い出してみて下さい。

スムーズに声を出しにくい状況になりませんか?

鼻が詰まっていると感じるのは、吸った空気の出口が塞がれているからです。ですから口で吸って口で吐くというような状況になり、非常に息苦しさを感じます。そのような状況のもっと酷いものが長期間続くのが、副鼻腔炎で、炎症の大きさによって、空洞が塞がれる状態も変わりますが、一般的には、鼻詰まりだけでなく、頭痛や目の痛みなどさまざまな不快な症状を発します。

歌を歌うとき、鼻腔はハミングするとこの部分に響くことや、声帯に負担をかけない歌い方をするのに重要なポジションであることから、歌手にとって、鼻は声帯に次いで非常に重要な場所であることには違いありません。
この部分に炎症が起きると、息の抜け道が塞がれることになり、歌声が身体の中に留まった状況になるのです。
そうなると、実際のところ、どのような歌声になるかといえば、伸びを欠いた詰まったような歌声になったり、滑らかに歌声を繋いで歌うことが難しくなり、ポツポツとフレーズが切れ気味なったりします。それを何とか食い止めようと喉に力を入れることでハスキーな歌声になったりするのです。

また鼻詰まり」が酷いということは、耳管と気道の奥は繋がっていますから、耳が詰まったような感覚になったりもします。すると音程が正確に取れない、さらには音が明瞭に聞こえない、自分の歌声がよく聞こえないというような症状が現れることもあります。

このように単に鼻詰まりを「軽い症状」「そのうち治るだろう」というぐらいの気持ちで放置しておくことは、歌手にとっては重篤な状況をもたらすこともあるということです。

副鼻腔炎は、歌手にとっては声帯ポリープや結節、さらには突発性難聴などと同じように、職業そのものに重要な影響を及ぼす疾患であることから、きちんと休養を取って疾患を治す、また、日頃から喉、鼻、耳をきちんと管理する、ということが重要になります。
歌手の場合、これらの器官が故障することは、職業存続そのものを脅かしかねないものになりますから、やはり専門機関にかかって管理するということの自覚を日頃から持ち続けることは重要なことだと思います。

 

※ジェジュンさんの記事『『この世界で』から感じた懸念』を購入された方は、記事に副鼻腔炎が彼の歌声に及ぼす影響についての分析を追加で書き入れていますので、購入された方に関しては記事にアクセスして頂くとその部分も読めるようになっていますのでご確認ください。

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