手越祐也の新曲『MAZE WORLD』を聴いた。

相変わらず、どんな曲を歌わせても上手い。

今回のこの歌では、彼の様々な歌声を聞くことが出来る、というより、どの音域のどの声の種類であっても非常に安定しているということが感じられる。

 

冒頭の歌声には低音部のハモリが使われている。

この楽曲に使われるハモリは全て彼自身の声が使われている。

冒頭の歌声も見事なハーモニーを醸し出している。

 

今回の楽曲で主体となる歌声はストレートボイスの明るめの中音域の歌声だ。

これに低音部や高音部のハモリがついて、ハーモニーを作り出している。

彼の歌声の場合、ほぼビブラートは存在しない。

ストレートボイスである。

但し、声の中央に硬い芯のあるストレートボイスとは違い、やや幅のある非常に艶やかな色を持ったストレートボイスである。その響きは、どちらかといえば、ソフトで色彩の濃さを感じさせるものだ。

また、この楽曲のメロディーの展開は、低音部から高音部への移動が頻繁に行われる。

そのメロディーを彼は地声とファルセットを切り替えて歌うことで、一本の綺麗なメロディーラインを作り出している。

多くの歌手は、ファルセットに転換すると、ボリュームが明らかに落ちたり、地声との音色が違ったりする為、転換部で一段メロディーラインが変わったのを感じさせるが、手越祐也の場合は、そのような段差を感じさせることはない。

非常にスムーズに切り替わっているのと、地声とファルセットの音色がほぼ同じに統一されており、一本の綺麗なライン上に歌声の粒が並んでいくのを感じさせる。

このようなテクニックは、彼が日頃から、しっかりボイトレを積んで培ってきたものであり、地道な努力が楽曲の歌唱力をしっかり支えていると感じさせるものである。

 

楽曲全体も今までの明るく元気の良さを感じさせるものから、少しダークなイメージのものへと移行することで、新しい分野の魅力を見せるものになっている。

 

全国ツアーの最終日にこの楽曲が発表され、昨年の7月以降、ほぼ休みなくアーティスト活動に邁進している彼のスタンスは、アイドル出身という枠を忘れさせるものであり、見事な転身と言えるだろう。

 

今年も精力的な活動を期待している。