「褒めてあげたい」

そう思った。

彼の一昨日の歌を聞いて、まず、頭に浮かんだのは、この言葉だった。

「褒めてあげたい」

それしかない。

それぐらい、彼の歌は緊張で精一杯だった。

その様子が溢れ出ていて、それ以上でもそれ以下でもない。

こんなに一生懸命、歌っている彼を久しぶりに観た。

と書くと、またファンからは、「失礼」「いつも彼はちゃんと歌っています」とか言われそうだが、

これほど歌に集中して、緊張いっぱいの姿で立っているのを久しぶりに観たように思った。

だから、もしボイストレーナーがいたら、彼には、先ず「よく歌えました!」と褒めるだろう。

それぐらい、彼の歌は素直で何の癖もなかった。

一生懸命歌っている。

そういう歌だったのだ。

 

 

今回の歌がMVや音楽番組、さらには先日のJ-JUN THURSDAY PARTYも含めて、今までで一番歌声として成立していたと感じる。

ただ、彼は非常に緊張していた。ただでさえ、緊張しやすいところに、様々なプレッシャーがかかっている。

NHK「うたコン」は、2年ぶりの出演だ。

2年前の「うたコン」出演の翌日から、彼は一切の活動が停止した。ラジオに復帰は出来ても、TVへの復帰はそうすんなりとはいかなかった。それぐらい、NHK側からすれば、彼への期待度は大きかった。だから、その信頼に対する落胆も大きかったと言えるかもしれない。だから2年ぶりに与えられた機会は、何としても掴みたかった。わざわざ「うたコン」単独の仕事の為に大阪まで移動してくるぐらい彼にとっても大事なことだ。それぐらい、「うたコン」に出れるかどうかは、今後の日本活動の大きなポイントになるからだ。

そういう経緯があっての2年ぶりの「うたコン」出演は、緊張しないわけがない。そして、彼の出番は最後だった。それがさらに彼の緊張を呼ぶことになったかもしれない。

だが、番組の流れから言えば、最後が妥当な線だった。

 

彼の今回の歌声は、先週のイベントより少し戻っていると感じた。

彼の歌声がフラフラする原因は、歌声に芯がないことだ。いわゆる響きの芯というもの。これが安定していない為に、歌声が安定しない。

そこは、何度も書くように「歌う」ことでしか鍛えられない。

即ち、歌って、歌って、歌って、実際に声を出して、声帯の動きに連動して筋肉が動く。その動きをしない限り、発声に必要な筋肉は鍛えられない。だから、とにかく歌えばいい。

2年近く、ほぼ歌ってきていない状況になっているのを取り返すには、「歌う」しかない。

 

彼が先週のイベントから、一昨日の出演までの間、実際のところ、どの程度、声を出して歌ったのか、私は知らない。

ただ、過密スケジュールの中、前夜に大阪入りし、体調的には万全を期したことは、彼の自覚によるものと感じる。

そうやって歌った『六等星』の歌声は、今の彼の精一杯だったと感じる。

あの歌声が、今の彼の精一杯の状態なのだ。

緊張で震える声も、上がってしまった支えも、彼の歌を必死で支えていたと言える。

 

「上手く歌えるだろうか」

「声はちゃんと出るだろうか」

「途中でひっくりかえったりしないかな」

「声量はちゃんと出るだろうか」

 

他のアーティストのファンからすれば、信じられないような心配をファンの中でした人がいたのも事実だ。

それぐらい、彼のこの12年の歌手生活は、「歌えて当たり前」「歌手として当然」の環境を与えられなかったからだ。

彼でなければ、とうの昔に歌うことを諦めて、多くの韓流スターのように「俳優」に転向していただろう。

「俳優」に転向した方が、どんなに精神的にラクかわからない。

しかし、彼は「歌手」であることも「日本活動」に復帰することも決して諦めなかった。

やっと3年前に、歌手として日本に戻り、ポジションを築き始めたところだったのだ。

だから、彼自身も、今回の「うたコン」には、特別な感情があったかもしれない。

そういうものを全部ひっくるめての歌声だった。

 

中音域の甘い音色は戻りつつある。

声量と声の伸びは、歌い込むことで取り戻せるだろう。

ワンフレーズ跳んでしまったのは、緊張とソロバージョンの練習が十二分に出来ていなかったのが原因で、フレーズに入れなかった、入るタイミングが遅れた、というところだと思う。

 

何にせよ、今回の歌には、彼の「歌うこと」への気持ちがよく現れていた。

泣きそうになるぐらいの緊張の中でも、一人で歯を食いしばって歌い続けた。

あれが彼の今の精いっぱい。

それを褒めてあげたい、と思った。

 

大丈夫、必ず、歌声は戻る。

そして一人で歌う感覚を取り戻す。

一つ一つの経験が、歌手ジェジュンを作っていく。

日本活動をまたここから始めればいい。

そうやって何度でも何度でもやり直せばいい。

 

今年、多くの機会が彼に与えられればいいと思った。

そうすれば、彼は自信を取り戻す。

J-POP界は、彼の刺激を待っている。

そんな存在になればいい。