「Papillon」の発売から約1年。
氷川きよしのポップスアルバムの第二弾の表題曲である、この曲のMVが公開された。
タイトルロールでもあるこの曲の特徴は、全体的に軽い色調のものになっており、その曲調に合わせて、彼自身の歌も実に軽いタッチで歌われている。それは、声のトーンを明るめのカンとした明確な響きにすることで、どの音域も無理のない発声になっており、安定した響きを得られている。
氷川きよしがポップス曲を歌う時の特徴として、一番感じるものは、張りのある声と響きを抜いた声との対比である。
この曲でも、Aメロの
「あなたはかけがえのない あなた
誰にも変えられない あなた」
の「あなた」という言葉の語尾「た」の音節は響きを抜いた歌い方になっている。
これに対し、Bメロの最後
「絶対ダメなんて思わないで」
のフレーズは、張りのある響きで歌われている。
またサビの部分
「You are you この言葉が届くといいな」から始まり、最後の「you are you」のフレーズは、
全体的に明るいピンの張った歌声で統一されている。
このように
その二つの色調をうまく使いこなすことで、メリハリのある歌に仕上がっている。
これがこの曲の特徴ともいうべき点である。
『限界突破✖️サバイバー」から3年。
演歌の貴公子というイメージを払拭して、彼は、歌手氷川きよしの世界は演歌だけでないことを世間に広くアピールし続けている。
そこには、「ありのままの自分で生きる」「自分は自分」という強いメッセージを感じるさせるものが多かった。
演歌という鎧を脱ぎ捨てて、自由に歌、音楽と向き合っている。
ポップスの氷川きよしには、そういうものを感じる。
そして今回の歌で最も感じることは、彼がポップスを歌うことに気負いがなくなったことだ。
「サバイバー」以後、ポップスやロックを歌う彼には、どこか一種の気負いのようなものを感じることがあった。
それは、今までのイメージを払拭するためのものであり、演歌に対して、ポップス・ロックという正反対のものを描き出すことへの意気込みのようなものが多かったが、この曲では、非常に力が抜けて、自然体で歌っている。
彼の中で演歌・ポップス・ロックが単に音楽のジャンルが違うだけで、表現において同列になったことを感じさせる一曲に仕上がっている。
歌や歌声はその人の人となりを現す。
そういう意味から言えば、今回のこの歌には、彼の誠実でピュアで繊細でありながら、根底に流れる不屈の精神というものを感じさせる。
「自分は自分でいいのだ」という強烈なメッセージが、彼自身の作詞による一曲という部分にもよく現れている。
『You are you』
あなたはあなた。
鎧を脱ぎ捨て、自然体になった彼がどのような世界を描き出しているのか、非常に楽しみである。