リクエスト頂いたものの中から、手越祐也が川畑要と一緒に歌った「Stand by me,Stand by you」を聴いた。

川畑が上手いのは言うまでも無い。伸びのいい高音、甘い歌声、中音域はよく鼻腔に響いている。相変わらず非常に安定した歌声だ。

この川畑とコラボした手越の歌を聴いて、今までのカバー曲を歌う彼から一歩確実に前に進んだのを感じた。

川畑と堂々と渡り合えるだけの安定した歌声であり、さらにそこには確実に手越祐也の音楽が提示されていた。

川畑の歌に呼応するかのように歌うコラボレーションだが、手越祐也独自の音楽がきちんと確立出来ているのを感じる。即ち、対等に堂々と渡り合えているのである。

 

私はこれまでも書いてきた自論の中に、グループでのメインボーカリストがそのままソロ歌手になれるかどうかは、全く別問題であると言うことを何度か書いてきた。

それはメインボーカリストと、ソロ歌手は全く次元が違うからである。

グループ音楽の中でどんなにメインボーカルを担当しても、それはグループの中での重要度であり、分割された音楽の中での歌唱でしかない。さらにグループの歌声に引き出されて音楽性が成立している場合もあり、最初から最後まで自分1人の力で歌い切っていくソロ歌手とは全く音楽の作り方が違うのである。

自分1人の力で歌い切るには、そこに独自性というオリジナルの確立がなければ到底、それは歌うことが出来ない。

即ち、自分がどのように音楽を表現するのか、ということを自分の意思で確固たる形で提示できるだけの内容律を持たなければ、それは到底歌い切れるものでは無いということになる。

 

手越祐也は、昨年の6月にソロに転向して、わずか一年足らずで確固たる自分の音楽の世界を築き上げてきた。

カバー曲であっても、今までの曲と違い、自分の音楽というものをしっかりと自信を持って打ち出してきている。さらにこの曲では、非常に歌詞が明確であるということが挙げられる。

元々、この人の日本語のタンギングは非常に正確でクセがない。素直で綺麗な発音で歌うのだが、今回の歌に関しては特に歌詞の言葉の一つ一つが非常に印象的で明確に歌われている。その為、川畑との掛け合いに於いても、全く引けをとることはなく、さらに手越の歌によって川畑の音楽が引き出され、川畑の下支えによって、手越の音楽が引き出されるという、コラボレーションとしては理想の形になっているのが印象的だ。

コラボレーションというのは、2人の力量がそのまま音楽の重量感に現れてくる。即ち、どちらかの力量が欠けていると、対等な音楽にならないという側面を持つ。

しかしこの2人のデュエット部分に於いては、2人の力量が対等で、お互いの音楽を堂々と提示しあっている。手越の歌が自信に満ちており、全く川畑とのデュエットにおいて、対等であることを示しているのである。

その為、二つの声が重なり合う部分は音の重なりが見事で、それでいて一切気負いがないのが素晴らしい。

即ち、手越の歌に全く気負いがなく、余裕すら感じるのである。

一つはこの人の表情。

実に歌うことを楽しんでいる、川畑とのコラボが楽しくて堪らないという雰囲気がそのまま歌の躍動感に繋がっているのである。

この気負いがない、というのが素晴らしい。

 

恐れ入った。正直、ここまで手越祐也が伸びているとは思わなかった。

ここまで彼が伸びてくる要素の中に、彼が独立を選んだという自分軸の確立があると思う。

歌は歌う人間の性格をよく現す。

彼は独立というものを経て、何者にも頼らない、自分という軸を確立したのだと思う。言い換えれば、自分という軸があったからこそ、独立し、独自の方法で音楽活動を切り開いてきた、とも言える。

彼は、単に歌が上手いという分野を既に超越して、自分のオリジナルの世界を確立する段階に入っている。

6月に出されるという新曲が非常に楽しみであり、彼の進化が楽しみだ。

まだまだ伸びる。

まだまだ可能性がある。

この人の音楽の世界はまだ始まったばかり。

いい曲に恵まれることを願っている。