日曜日にニコ生で放送された「2021 KOREA FESTA だからKOREA」

でのジェジュンのコンサートを拝見した。

曲は4曲。

いずれもJ-POPのカバー曲で、

『未来予想図II』『メロディー』『化粧』『forget-me-not』

このニコ生というのは、コメントが画面上にどんどん流れる。

それをオフにして彼の歌を聴いた。

 

笑うしかない。

彼自身、そうだったのだろう。

未来予想図IIを歌い終わって彼は声を立てて笑った。一年振りに人前で歌う歌は余りにもお粗末で彼自身、可笑しくて仕方なかったのだと思う。

なにせ、歌い出しのドリカムの中村氏が絶賛した「そつぎょうしてから」の「そつぎょう」は、発声ポジションに声が当たらず、音程が外れ、芯のないヘロヘロの声だった。

 

10年以上、彼の歌声を聴いてきたが、ここまで芯のないヘロヘロの声は聴いた記憶がない。

これを私はファン達のように絶賛など、到底できない。

しかし、怒る気にもならない。

そう、私も笑うしかないのだ。

あまりに音がハズレ過ぎて笑うしかなかった。

そのあとはお決まりのコース。

喉の力で押してなんとか歌を立て直そうとしていた。

彼が首に青筋を立てるぐらい、喉声で歌っているのも珍しい。

あまりに声帯がくっつかないので、力でくっつけるしかなかったのだろう。

ようするに、それぐらい声帯のコンディションは最低だった。

その原因はいくつかあると思われるが、彼の言うように、「睡眠不足」

これが最大の理由のように思う。

声帯は、乾燥を嫌う器官だ。

しかし、睡眠不足になると、声帯そのものが乾燥して、バリバリの状態になる。

よく寝不足が続くと、カスカスのハスキーな声になりがちだが、

それは乾燥によって声帯の柔軟性が失われ、薄い膜のくっつきが悪くなるからである。

そうなるとどんなにブレスを送っても、伸びやかな声は出ず、逆にヘロヘロのポジションに当たらないひっくり返りそうな声になる。

きっと彼は、声がひっくり返りそうになったのだろう。

自分はいつもと同じように息を送って歌声を出そうとしたが、声帯が反応しなかったのである。

そして、歌って出た声を聴いて、自分自身でおかしくなったのだろう。

ようするに声帯の状態は彼の予想を遥かに越えて、悪かった、ということになる。

 

彼は歌手だから、私は彼を庇うようなことはしない。

お世辞にも歌が上手く歌えたとは言えない。

しかし、彼の今回の歌は、歌手がドラマの撮影と歌うことの両立は出来ない、ということを明確に示したものだと思う。

韓国のアイドル歌手は、ある程度、名前が売れてくると必ず、ドラマに出演する。

その間は歌手業は完全にストップすることが多い。

これは、ドラマ撮影が半年にも及ぶ長期に渡ることと、過酷な労働条件にある。

彼の場合も撮影は9月から始まり、来年の1月もしくは2月ごろまで続く。

即ち、5ヶ月以上に及ぶ長丁場なのだ。

またスタントも使わず、アクションシーンを撮るのも、韓国ドラマにはありがちで、台本の遅れによる撮影の遅れ、さらには連日の深夜に及ぶ長時間の撮影と、およそ、身体のコンディションなどは度外視した撮影スケジュールが組まれる。

これが日本のドラマであれば、ここまでの過酷さはない。

即ち、日本では歌手業と俳優業の両立は可能であり、ドラマ撮影が終わった途端に、コンサートツアーを組む、ということも可能である。

 

歌手は身体のコンディションが声帯のコンディションに直結する。

その為に、身体が疲れていれば、声帯は思うように反応しない。その為、歌手は身体のコンディションをストイックなまでに管理する。

そういう点から言えば、今回の彼は、とても歌えるような状況ではなかった。

 

反応の悪かった声帯は、最後までコンディションが良いとは決して言えない声だった、

いつもの彼の艶やかで伸びやかな歌声は影を潜め、ハスキー気味で力で押し切った歌声になっていた。

それでもなんとか立て直して、歌い切ったのは、さすがにこの3年間のコンサートツアーの経験がものを言っている。

残りの3曲はそこまでの破綻もなく、無難にまとめ上げていた。

しっかり歌いこまれた曲の強みであり、彼の集中力にもよると感じる。

 

いずれにしても、笑うしかなかった彼の歌は、久しぶりに歌声を聴けただけで良しとするかどうかの問いをファンに投げかけた。

日本活動が出来なかった8年間は、そんな歌でも聞ければいい、彼が歌いさえすれば良い、と思った人は多かっただろう。しかし、3年の歌手活動を経験して、それでは満足出来ないファンがいるのではないか。

 

今度は、感動するしかない歌声をぜひ聴いてみたい。

彼の歌手としての実力をまざまざと感じてみたいと思った。