MISIAがTV番組の取材中の落馬事故で「胸椎棘突起(きょうついきょくとっき)部」の骨折により全治6週間との記事を読んで、歌手にとって胸椎を骨折するということについて、私自身の経験を踏まえて、どのような影響があるか考えてみた。

 

今回、彼女が骨折したのは、胸椎の棘突起という部分であるが、棘突起とはいわゆる背骨のゴツゴツとした小さな隆起部分のことを言う。

この部分が骨折したとのことで、胸椎の何番目の棘突起なのかは発表されていない為、そこの部分に関しての詳細はわからない。

ただ、全治6週間と発表されているその期間を見て、私自身の経験から、そんな簡単なものだろうか、と思った。

 

実は私も胸椎を骨折したことがある。

5年ほど前、不注意から尻餅をつき、胸椎を圧迫骨折した。

私の場合、5番目の胸椎を骨折ではなくヒビが入った。

医師には、全治8週間と告げられた。

ヒビ程度でもそれぐらいの期間が必要だった。

さらにそれは骨折箇所に新しい骨が再生されてくる期間であって、その骨が以前と同じ強度を持つようになるには、もっと時間を要するとのことだった。

 

胸椎を骨折した場合、安静を保って自然に治癒するのを待つしかない。

私のように胸椎であれば、骨折した箇所にセメントを流し込んで補強する手術が行われることもあるが、その手術をすることで骨折箇所は早く完治するが、前後の骨との強度に差が生じ、今度は前後の骨が圧迫骨折する可能性もあると言われた。

幸いにして私の場合、ヒビだったので、自然治癒を待つしかないとの判断で、とにかく安静を保つように、と厳命された。

その時、医師から言われた言葉は、「脊椎の骨の状態は医師でもわからない。もし、骨の強度が不足していれば、いつグシャっとつぶれるかもわからない。とにかく安静にして!!」とのこと。

「グシャ」っという言葉を聞いて、ゾッとしたのを覚えている。

それで私の場合は、とにかく安静を保った。

最初の2週間ほどは、痛みで寝返りも打てない程だった。

ヒビが入っただけでも、それほどである。

MISIAの場合は、棘突起という出っ張りの部分を骨折しているとのこと。

おそらく仰向けには寝れないのではないだろうかと推察する。

また痛みが激しい、との報道記事もあったので、相当、痛いのではないかと思う。

 

胸椎の骨折が厄介なのは、骨折が完治した予後である。

何週間にも渡って、ほぼ寝ている状態でいるので、腹筋、背筋が非常に弱ってしまう。

これが厄介なのである。

腕や足の骨を折っても、リハビリが必要なのは、その部分の筋肉が弱ってしまうからで、それと同じことが胸椎骨折でも起きる。

即ち、腹筋と背筋のリハビリをしなければ、元の状態には戻りにくい。

 

 

歌手にとって、腹筋、背筋は命綱でもある。

声を支える重要な筋肉であり、この部分が弱ると、勢いのある歌声を出すことが出来ない。

特に歌にとっての腹筋、背筋は表面の筋力ではなく、インナーマッスルの部分の筋力になる。

この部分が、長期間、寝ていると完全に弱ってしまうのである。

私でも通常の歌声を完全に出せるようになるには、1年近くかかった。

それも意識してその部分のインナーマッスルを鍛えたことによって筋力が戻ったのである。

 

MISIAの場合、十分、スタッフや事務所もフォローするであろうから、その部分のトレーニングなどのリハビリは万全の形を取ると想像できる。

しかし本人の感覚として、いつもの状態に戻るのには、かなりの時間を要するのではないかと感じる。

また彼女の場合、体全体を使って声を出すタイプであり、特に脊椎を折り曲げてブレスの勢いを体の中心に通して歌うタイプの歌手であるから、脊椎の部分の健康は非常に重要になると考える。

 

全治6週間というのは、単に骨折した箇所がくっつくという期間であって、元のように歌えるようになるには、さらに長い期間がかかるのではないかと感じる。中年期に差し掛かった彼女の年齢的なことも含めて、回復にはある程度の時間がかかると思われるし、何より彼女自身が元のようにパフォーマンス出来るようになったと自覚するには、かなりの時間がかかるように感じる。

 

1日も早く順調に回復し、以前のようなパワフルでエネルギッシュな歌声が戻ることを願っている。