毎年、この時期になると紅白歌合戦の出場者の発表がある。
年末の国民的行事であり、驚異的な視聴率を誇っていたこの番組が、年々、視聴率がジリ貧になっていく。
それに伴って、出場者の顔ぶれに違和感を抱くのは私だけだろうか。
ここのところの数年、ほぼ出演者の数人しか、マトモに聴く気にならないこの番組に、
今年は遂に全く聴く気にならないな、と思ったのは、私だけだっただろうか。
それぐらい今回の人選には違和感を持った。
NHKは「歌合戦」というものをどう捉えているのか、教えて欲しい。
これは去年の紅白の後にも確か、同じような記事を書いたような記憶がある。
それは、上沼恵美子の発言の賛否に対する記事として書いた。
あの時も「いつから紅白は歌合戦ではなく、ただのイベントになったのだろうか」と思った。
歌合戦と名付けるからには、「歌える歌手」をラインナップして欲しい。
実力派の誰もが認める歌手達の集まり。
それが紅白だったはずだ。
だから、歌手達は大晦日の紅白に出ることを目標にして仕事をする人が多かった。
紅白が長年培ってきたものは、そこに選ばれる歌手達の実力への信頼感であったはずだ。
「紅白」に選ばれることが歌手達のステータスであり、勲章であったのは、長年の多くの先輩達が築き上げてきた「歌合戦」というものへの信頼感と評価だ。
「合戦」というからには、歌の実力を競い合っての勝負事。
これが他の番組と根本的に違っていた。
「歌による真剣勝負」
その舞台に上がれるのは、歌によって真剣勝負が出来ると判断された歌手だけだった。
だからこそ、そこに選ばれると「一人前の歌手」だと認められることになり、
出場が決まった新人歌手は涙を流したのである。
緊張で歌えない、声が震える、実力が出せない。
そんな風景を何度も見てきた。
なぜ、歌手達が緊張するかと言えば、それは真剣勝負だったからだ。
一種独特の雰囲気の中で、自分の歌を披露する。
「一年の歌い納め」と言われ、歌手達はその瞬間に真剣勝負に挑むのである。
これが「紅白歌合戦」だったはずだ。
しかし、近年、
「うたコン」の制作チームがそのまま紅白の制作を担うようになってから、その形態は一変した。
「うたコン」は、それまで演歌中心の歌謡番組だったものが、形態をガラッと変え、アイドルやJPOPの若手を大量に出す番組へと様変わりした。
さらには、カバー曲やミュージカルなどのパフォーマンスが中心のステージを組むようになった。
それを批判するつもりは毛頭ない。
それはそれで結構なことだ。
数少ない歌番組の中で、若手が出演出来るNHKの唯一の番組でもある。
しかし、それと「紅白」は違うのではないのか。
歌番組や民放の各局の特番の音楽番組とは、紅白は違ったはずだ。
なぜなら、「紅白歌合戦」なのだから。
確かに実力派の歌手の歌の競い合いはある。
しかし、それはほんの数人であって、あとは、パフォーマンス主体のものばかり。
いつから紅白は、「歌合戦」ではなく、「パフォーマンスのイベント野郎」になったのか。
毎年、録画をして、ほんの数人の歌を聴くだけで、あとは早送りする。
真剣に聴く気にならなくなったのは、いつからだっただろう。
いくら視聴率が稼ぎたいからと言って、特定の事務所のグループを7つも出す意味が私にはわからない。
三浦大知や、島津亜矢といった実力派の歌手達を落としてまで残さなければならない意味が知りたい。
これでは、本当に音楽好きな聴衆達は、紅白にソッポを向くだろう。
そうやって、紅白は自分自身でその気品も気位の高さも権威も捨て、民放の特番となんら変わらない歌番組に成り下がったのだ。
「落選組で別の歌番組をやったらいいんじゃないか」
私もそう思った。
もし、そんな歌番組が出来れば、迷わず私はそちらを観る。
今年は、紅白は観ずに裏番組でも観ようかと真剣に考えている。