氷川きよしがLUNA SEAの「I  For You」をカバーしたのを聞いた。

歌う直前に河村隆一からの直接のメッセージに感動して「泣きそうです」と言いながらステージに立った彼の歌声には、演歌の影はどこにもなかった。
今まで何曲か聴いたJPOPのカバーと全く違うと感じたのは、発声そのものがすっかり変わっていたことだ。
「時代と共にジャンルが変わってるだけなので音楽というのは1つの線上に繋がっていると思うので、今までどおりの氷川君の声でぜひロックを歌いあげてください」
そう河村隆一は話したが、彼の歌声は進化していた。
LUNA SEAのヒット曲「I For You」
オリジナルの河村隆一の歌が透明的な歌声で始まるのに対し、氷川きよしの歌にはしっかりと色が存在している。
冒頭の声は非常に甘い中音域の声が続く。ビブラートが存在し、演歌を歌う歌声とは全く異なる色味を持つ。しっとりと歌い上げていく手法は、どこにも演歌の影を感じない。
サビの高音部に向かってメロディーが高くなっていくフレーズに於いても彼の歌声は非常に濃厚で甘い響きを持ったままだ。フレーズの終わりも響きを綺麗に抜いている。
この日の彼の歌声は私が今まで聞いた中で最も演歌の歌声から遠く、完全に発声を変えていると感じた。
元々声を持つ人だ。あとは経験を積むだけでどんどん上手くなる。そう感じた。
この歌を歌い終わり、フーッと小さくため息を吐いた。
「新しい氷川きよしの姿を見せる」と言った彼の緊張が伝わるような瞬間だった。
この姿と、メドレーで歌った「限界突破×サバイバー」で最後の歌詞を間違えて舌を出した彼を見て、河村隆一やファンが「いつまでもピュア」と言った意味がわかった。
42歳。
きっと彼はいつまでも謙虚で新人の心持ちでいる人なのだろう。だから、きっと新しいジャンルでも成功する。
そう思った。